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JavaOneレポート

原点回帰を目指し、開発者とのコミュニケーションを重視する


渡邉 利和(toshi-w@tt.rim.or.jp) [著]
2002年3月29日

3月25日〜29日の5日間に渡り、米国San FranciscoでJavaOneが開催中だ。ここ数年顕著だった「ビジネス面でのアピール」は目立たなくなり、“開発者会議”という本来の性格を取り戻しつつあるように見える。

Moscone Center
会場となったSan FranciscoのMoscone Center

JavaOneの軌道修正

経済状況の影響やテロの問題など、さまざまな要因が想像できる一方で、何が決め手になっているかは分からない状態だが、JavaOneの参加者数は昨年に比べて減少したようだ。正確な登録者数の発表はないが、会場を歩き回っていると「やや減った」という印象を受ける。特に一昨年/昨年と目立っていた日本からの参加者が、すっかり目立たなくなった感がある。これは、つい3カ月前に日本でJavaOneが開催されたことの影響も大きいと思われる。実際、日本ではJavaOneに続いて3月中旬にはSun Tech Daysも開催されており、これらのイベントを通じて発信された情報の多くは今回のJavaOneでもそのまま有効なものが多い。もちろんテロの影響も完全になくなってはいないのだろうが、日本人にとっては情報収集だけが目的ならあえてSan Franciscoまで来なくても問題はない、という状況になっていると考えられる。

こうした状況と歩調を合わせるかのように、初日の基調講演でPat Sueltz氏から「開発者中心に戻り、テクノロジーの話を」といった表現が聞かれるなど、原点回帰をアピールしている。原開発者であるJames Gosling氏は、記者会見の席でJavaOneのイベントしての意義を問われた際に、「より多くの情報を開発者に提供する場」であり、「開発者同士が直接顔を合わせてコミュニケーションすることが重要」という趣旨の発言をしていることからも、開発者が一堂に会して相互に情報交換しあう場という本来の意味が再確認されているようだ。

もっとも、今回で7回目となるJavaOneが当初の姿にそのまま戻るわけではない。Java自体が急速に発展しつつあり、混乱と熱気の中で開発者が盛んに議論を交わしていた時代には後戻りしようもなく、現在では話題の中心は実用システムの実装技術についてのものだ。すでにJavaを利用した商用製品は膨大な量に上るため、Java自体に関しては「安定性」と「信頼性」が最優先のテーマとなり、急速な変化を嫌う状況になってきている。それに伴い、参加者も言語や実行環境の構築に関心がある開発者から、応用レベルのシステムの開発者中心へシフトしているのも雰囲気の変化の一端を担っているものと思われる。

コミュニティの拡大を目指す

基調講演
Scott McNealy氏の基調講演では、いつものように様々な表現でJavaの勝利と明るい未来が語られた。これもその1つで、“JavaOne”をもじって「Javaは勝った」と宣言した

2日目の基調講演の中では、Apache Softwareとの協力によって、Java技術のオープンソース化への道が開かれたことが発表された。もっともこれは、既存のJava技術がすべてオープンソースで公開されるという意味ではなく、あくまでもJCP(Java Community Process)の活動成果に関しての話である。

Scott McNealy氏とJason Hunter氏
Scott McNealy氏の基調講演の途中、Apache Software FoundationのVice President, Java Community ProcessのJason Hunter氏が登壇し、JCPのオープンソース対応に関して合意に至ったことを発表した

Javaは単体のソフトウェア製品ではなく、開発言語という「一つのツール」という位置づけに収まるものでもない。登場当初から「プラットフォーム」としての性格を強く打ち出している。そのため、勝手な改変を避け、互換性を維持するための努力が払われてきたわけだ。この点に基本的な変更はなく、独自機能の勝手な追加や必須機能の削減等を行なった環境をJavaという名称で配布することができるわけではない。ただし、互換性を維持するための制約が厳しすぎたために、実際にはJCPに基づいてコミュニティのメンバーが開発した実装に関しても、オープンソースに基づく自由な公開等が制約されているという問題があったようだ。

そこで、Apache Softwareの要請を受け入れる形でJCPの規約を修正し、リファレンス実装をオープンソースで公開することが明示的に認められるようになった。ただし、実際にはこの変更は現在JSR(Java Specification Request)として提案されている最中のものであり、正式な決定に至るにはもう少し時間がかかるようだ。

こうした一連の動きには、「Javaコミュニティをさらに拡大しよう」という意図がある。現在「Javaコミュニティ」は開発者集団の中では最大規模の勢力に拡大していると言われるが、それでもJavaに対して批判的な開発者は珍しくない。Microsoftの環境を主要プラットフォームとしている開発者の中にはJavaに対してちょっと距離を置いて見ているという姿勢の人がよくいるし、オープンソースを推進している開発者コミュニティからは、「Javaは十分にオープンであるとは言えない」という批判もある。

一方、Javaがプラットフォームである以上、支持し、利用してくれるコミュニティが拡大しないことにはその有用性も限定的なものになってしまうはずだ。ここ数年のSunは、コミュニティに関しては「よい製品を作っていれば、自然にコミュニティが形成される」くらいに思っていた感がある。しかし、Microsoft批判を強める一方でSun自体も批判される立場になり、そのやや強硬な態度は“Sun嫌い”という人を増やしてしまう結果にもなっているようだ。

こうした状況を踏まえてか、最近Scott McNealy氏のスピーチは「コミュニティ」に言及することが増えている。また、Linuxへの積極的なコミットメントを発表するなどの一連の動きは、Linuxコミュニティに接近し、受け入れられる存在になろうとする努力の一環だろう。今回のJCPのオープンソース対応も、そうした動きの中の一つの具体的な成果だと考えられる。

そもそもSunがサーバ市場で現在の地位を築いた最初のきっかけは、インターネット自体の開発に取り組んでいたアカデミック分野での研究者コミュニティがSunのマシンを好んで使っていたため、初期のインターネットサーバの多くがSunのマシンとなったためだといえる。JavaOneのみでなく、コミュニティとの相互関係に関しては、Sunにとっても“原点回帰”を目指しているというのが現状であろう。

もう一方の主役は“Web Service”

JavaOneでの技術的な面での今年の主役は“Web Service”である。J2MEに対するWeb Service環境の実装(JSR #172)も提案されており、携帯電話のような小さなデバイス上に直接Web Serviceを載せることも可能に使用としている。この結果、サーバやPCはもちろん、膨大な数のデバイスがWeb Serviceのネットワークに直接参加する可能性が生まれる。

Web Serviceという言葉に関しては、当初Microsoftがこのアイデアを強力にアピールしたこともあってか、拒否反応を示す人も多い。また、“Web”と“Service”という一般的な用語の組み合わせである点から、特定の技術の名称ではなく、広い意味を持つ包括的な概念ととらえる人も少なくない。そのためもあってSunは“Service on Demand”という概念を提案し、狭義の実装技術の名称としてのWeb Serviceを含む上位概念としている。

このService on Demandが“SunONE”の中心的な存在となっているのだが、実は今回のJavaOneではSunONEやService on Demandという用語はあまり多くは聞かれない。もちろん、展示会場でSunのブースに行けば、そこら中に“SunONE”と書かれているが、基調講演などではほとんど言及されなかった。James Gosling氏などは、「メールサーバもファイルサーバもDNSサーバも、サービスを提供するものはすべて“Web Service”だろう」という発言をしたほどだが、セッションのタイトルなどにはWeb Serviceという言葉が氾濫している。これもある意味では、コミュニティでの一般常識に従う姿勢の現われなのかもしれない。

SunONE Starter Kit
展示会場のSunのブースで配布されていたSunONE Starter Kit。膨大なソフトウェアが収録されており、開発者にはうれしいキットだ

会期中に発表されるニュースリリースや展示会場での製品紹介もWeb Serviceに関連するものが目立つ。Sunのブースでは「SunONE Starter Kit」が配布されている。これは“Java Web Service Developer Pack EA 1”という開発者向けのツールやドキュメント類に加え、Javaの実行環境(J2EE、J2SE)や基本開発ツール(Forte)、iPlanetの各種サーバソフトウェア(Application Server、Directory Server、Web Serverなど)その他多数のソフトウェアをパッケージしたもので、これを使えばすぐにSunONE対応のソフトウェア開発が始められる、というものだ。

MicrosoftがVisualStudio.Netを発売して開発者向けの環境整備を進めていることに対して、Java側でもWeb Service対応は十分なレベルで整備されているとアピールする狙いもあるようだ。というのも、余談だがこのパッケージの表面には大きく“Start me up.”と書かれており、「さぁ始めよう」というイメージで理解することができるのだが、一方でこれはロックバンドRolling Stonesの有名な曲のタイトルであり、かつWindows 95の発売の際に“スタートボタン”の存在をアピールするための印象的なテーマ曲としても使われたものと同じなのである。



NTTブース
NTTのブースでは、1MBのフラッシュメモリを組み込んだJavaCard「Sapphire」やNICE(Network-based IC Card Environment)、MUSA(Model-based Ubiquitous Service Architecture)が紹介されていた。写真は、MUSAによるユビキタススマートカードネットワークのシステム概念図

一時期の携帯電話での実装や組み込み機器での取り組みで強烈なアピールを続けていた日本企業の存在は、今年は目立たないものになっている。会場で直販を行なってプログラミングコンテスト等を実施しているSharpのZaurusは大評判で長蛇の列ができているが、ほかにはあまり日本からの話題といえるようなものは見あたらない。しかしながら、展示会場ではNTTがJavaカードでの取り組みで興味深い展示を行なっている。これは、一般向けに公開されるのは今回のJavaOneが初めて、というもので、単純化して表現すると「JiniとJavaCardを組み合わせて、十分な認証機構を備えたユビキタスサービスネットワークを構築する」という技術だ。

多数のデジタルデバイスが動的にネットワークを構成し、相互にサービスを利用できるように、というコンセプトでさまざまなユビキタスシステムが提案されているが、現状ではセキュリティや権限の制御まで踏み込んで実装されているものはあまりない。Jiniも登場からずいぶん時間が経っているが、未だに普及段階に至っていないし、認証やユーザーごとに認められる権限の違いを正しく取り扱うという需要に対しては、基本的な機能だけはあるものの実用レベルのサービスとして具体的な実装はないようだ。これに対し、NTTのJavaCardでは行政によるICカード配布といった利用を想定し、そこで求められる強固なセキュリティと柔軟なサービス提供を両立させようとする試みで、今後重要な存在になると考えられる。



SUMO Robot
James Gosling氏の基調講演で氏が対戦して見せた「SUMO Robot」は会場の「ハッカーズラウンジ」に置かれ、来場者が挑戦できるようになっていた。相撲と言うよりはラジコンカーのぶつけ合い、という感じのものだが、対戦する相手は自律型ロボットになっており、センサーで発見した敵を自動的に攻撃するようになっている点がポイント

Web Serviceに注目が集まってはいるが、Javaの応用分野は幅広く、さまざまなアプローチで技術の作り込みが進んでいることが改めて確認できた。





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