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すべてのデバイスはBluetoothに通じる
2000年4月3日
1400社が支持する無線インターフェイス
有線から無線へ。ワイヤレスネットワークの本格的な普及とともにBluetoothという無線インターフェイスが注目されている。現在、標準化団体のBluetooth SIGには、携帯電話とパソコン、チップセットのメーカーだけでなく、周辺機器、AV機器、POS端末、自動車、通信機器などのメーカーも含め、史上空前の1400社が支持を表明している。なぜBluetoohがこれほど注目されるか? ここではBluetoothの概要とその将来について、分かりやすく説明していきたい。
400社が支持する無線インターフェイス
Bluetoothは、携帯電話、パソコン、周辺機器間でのデバイス間で1Mbpsのデータ送受信を可能にする無線インターフェイスである。仕様はNokia、Ericsson、Intel、Motorola、Toshibaを中心に発足した業界団体Bluetooth SIG(※1)によって策定され、1999年8月には正式バージョン1.0がリリースされている。
現在、Bluetooth SIGには携帯電話、パソコン、周辺機器など1400社近くのメーカーが参加し、各社製品化を進めている状況だ。参加している顔ぶれをみると、携帯電話やパソコンのメーカーだけでなく、プリンタ、デジタルカメラ、時計、POS端末、ゲーム機、自動車、AV機器など非常に幅広い。そして、先頃SonyとMicrosoftが対応を表明したことで、業界標準仕様としての地位はますます高まり、さまざまなデバイスでの相互接続も実現される運びになっている。かつて、ここまで広範囲のデバイスで実装されたインターフェイスはない。
Bluetooth SIGの成り立ちをみていくと、携帯電話とパソコンという2つの業界がどのように1つの標準仕様に動いていったかがよく分かる。ワールドワイドで大きなシェアを誇る携帯電話メーカーであるNokia、Ericssonは携帯電話同士のデータ交換を完全にケーブルレスで行ないたいという構想を約6年前から暖めていた。そして、将来的にデジタルデータを扱うコンシューマデバイスの中心であるパソコンとの接続が必須と考えたのだ。その結果、ほとんどのパソコンに内蔵されているCPUの元締めであるIntelに、この仕様の話を持ちかけたのがBluetooth SIG設立のきっかけである。一方で、当時IntelはMicrosoftとともにHomeRF(※2)を推進し、同じ2.4GHz帯域(※3)を利用する家庭内無線ネットワークプロトコル「SWAP(Shared Wireless Access Protocol)」の策定に動いていたが、結局Bluetoothの策定も主要メンバーとしてかかわることになる。これには「USBの無線化にBluetoothを採用する」というIntelの思惑があったのが大きな理由だ。パソコン向けの周辺機器接続用インターフェイスとしてIEEE1394ではなく、USBを積極的に推進するIntelとしては、何千万台もの携帯電話に搭載されると予想されるBluetoothをワイヤレスUSBとして採用することが最善の選択肢だったわけである。
※1 Bluetooth SIG(Special Interest Group)……1998年に結成されたEricsson、Nokia、IBM、Intel、Toshibaの5社をプロモータに結成された業界団体で、Bluetoothの標準化作業や普及、技術支援などを行なう。2000年1月5日現在のメンバーは1371社。また、当初の5社に加え、3COM、Lucent Technologies、Microsoft、Motorolaの4社がプロモータとして参加することになった。ちなみにBluetoothとはスウェーデンとノルウェーの統一国家を樹立した中世の王様の名前。電話業界とパソコン業界の統一を祈願してEricsson社が命名したという。
※2 HomeRF(Home Radio Frequency)……IntelとMicrosoftが中心とする業界団体HRFWG(Home RF Working Group・http://www.homerf.org/)によって策定された家庭内無線通信の規格。無線LANのIEEE802.11とコードレス電話で用いられるDECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)の音声転送方式を組み合わせ家電用に簡素化したもの。家庭内のパソコンやコードレス電話での利用を想定しており、携帯電話での搭載を前提としたBluetoothと市場は異なっているとされている。このHomeRFの通信プロトコルがSWAPで、データ伝送速度は最大1.2Mbpsで、最大伝送距離は50m。データ伝送に周波数ホッピングスペクトラム拡散方式を用い、1秒間に50回のホッピングを行なう。6チャネルまでの音声チャネルも確保する。1998年6月には、国内でもHRFWGの日本委員会が発足している。
※3 2.4GHz帯域……免許不要で扱える周波数帯域で、ISM(Industrial Science Medical)と呼ばれる。欧米でも同帯域が開放されており、Bluetoothのほか、電子レンジ、IEEE 802.11やHomeRFのSWAPなどもこの帯域を用いている。同じ場所で同時に複数の無線通信を行なうことでパケット衝突(コリジョン)が起こるため、データ伝送速度の低下が懸念されている。なお、国内では1999年11月の郵政省の答申により、既存の2471G〜2497GHzまでの26MHz幅に加え、2400〜2483.5GHzの83.5MHz幅も利用できるようになった。
(月刊ASCII network PRO)
携帯電話とパソコンからホームネットワークの通信インフラへ
Bluetoothが想定しているデバイス間通信は、いわゆるPAN(Personal Area Network)の需要に応えるものである。Bluetoothでは、たとえば携帯電話からテレビを操作したり、デジタルカメラからのデータをプリンタで直接印刷したり、MP3データをコンパクトフラッシュなどのメディアに伝送したりといったことが実現する。あるいはカバンの中に携帯電話を入れたままパソコンとスケジュールやアドレス帳を同期させたり、ヘッドセットから携帯電話を経由し、電話を行なったりと利用方法はアプリケーションによって無限に広がると言える(図1〜4)。
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Bluetoothの利用例 図1 |
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Bluetoothの利用例 図2 |
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Bluetoothの利用例 図3 |
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Bluetoothの利用例 図4 |
そして、このBluetoothの構想が昨今のデジタル家電の波にちょうど適合した。つまり、今後はパソコンだけがデータネットワークを担うのではなく、今までネットワークとは無関係だった家電やパソコンとの接続を前提とした周辺機器などが同じネットワークに参加してくるからだ。パソコンは参加者ではあるが主人公ではない、というホームネットワークの需要が、結果的にBluetoothの採用を一気に後押しする形になった。こうして携帯電話とパソコンが主体だったBluetoothが、次世代ホームネットワークの通信インフラとしてにわかにおどり出てきたのである。
現在Bluetoothは、会社で、屋外で、家庭内で、場所を選ばず利用できる無線インターフェイスとして注目されている。パソコンを中心にした無線インターフェイスの仕様としては赤外線を使うIrDA(※4)と無線Ethernetの標準仕様であるIEEE802.11(※5)、そしてHomeRFのSWAPなど挙げられる(表1)。
表1 2.4GHz帯域の無線通信方式
現行の無線通信方式ではFSSS、DSSSなどのホッピングによる変調方式が採用されている。Bluetoothの場合、やはりキャリアセンス不要なのが特徴といえる
| 最大データ伝送速度 | 変調方式 | 最大伝送範囲 | アクセス制御 |
| Bluetooth | 1Mbps | FHSS | 10m/100m | なし |
| IEEE802.11 | 2Mbps | DSSS、FHSS | 100m | CSMA/CD |
| IEEE802.11b | 11Mbps | DSSS、FHSS | 30m | CSMA.CD |
| HomeRF(SWAP) | 0.8/1.6Mbps | FHSS | 50m | CSMA/CD、TDMA |
いずれも比較的近距離でデバイス同士が通信するための無線ネットワーク仕様であり、Bluetoothと競合することになる。しかし、なぜBluetoothがこのように多くのメーカーの支持を集めたのだろうか? 当然、競合仕様や過去の通信インターフェイスに比べ優れた特徴を持っているが故である。ここからはBluetoothの技術概要を他の仕様との比較も交えて解説していきたい。
※4 IrDA(Infrared-Data-Association)……1993年に結成された赤外線データ通信の標準化団体、あるいはその通信規約を指すことも多い。物理層、リンク管理やトランスポート制御を行なうデータリンク層のほか、RS-232Cエミュレーションを行なう「IrCOMM」、静止画転送の「IrTran-P」、電話帳やスケジュールなどのデータ交換を行なう「Ir-OBEX」などにアプリケーション層などの一連のプロトコルスタックにより構成されている。伝送速度は115.2kbps、4Mbps、16Mbps。ワイヤレスのデータ伝送方式の本命として、ノートPC、PDA、プリンタ、家電用リモコン、POS端末などに幅広く搭載されている。
※5 IEEE802.11……IEEEに標準仕様として勧告された2.4GHz帯域の無線LAN仕様。変調方式の違いによって、1ダイレクトシーケンススペクトラム拡散(DSSS)方式、周波数ホッピングスペクトラム拡散(FHSS)方式、3赤外線方式(IR)の3仕様が勧告されている。1999年11月にはIEEE802.11bが正式勧告され、11Mbpsの高速な無線LANが実現することになった。Apple Computerの「iBook」に搭載されている「AirPort」はこの方式を利用したもので、Lucent Technologies、3COM、AlliedTelesisなどが続々と対応製品を出荷する。
(月刊ASCII network PRO)
キャリアセンス不要Bluetoothの伝送方式
Bluetoothは、デバイス間で最大1Mbpsでのデータ送受信を実現する。非対称伝送時の実効速度は下り721kbps、上り57.6kbps(対称伝送時は432.6kbps)で、回線交換とパケット交換の両方式に対応する。さらにBluetoothの場合、非同期通信時はデータ送受信のほかに64kbpsの音声専用チャネルを3つ同時に確保できるという特徴を持つ。つまり音声通話をしながらWebをブラウズするといったことが可能なのだ。また、伝送範囲は10mと100mが選択できる。特に10m範囲のクラス2/3のBluetoothデバイスでは送信出力を上げるためのパワーアンプが不要であり、待機時0.3mAという低電力が実現される。こうした仕様になっているのは、Bluetoothがパソコンよりむしろ携帯電話に主眼が置かれているからと言えるだろう。また、Bluetoothが使用する周波数帯域は免許不要な2.4GHz帯で、変調方式にはIEEE802.11やSWAPと同じ周波数ホッピングスペクトラム拡散方式(※6)が採用されている。Bluetoothでは79個のチャネルを1秒間に1600回変更(ホッピング)しながら、データの伝送を行なう。
さて、競合するIEEE802.11と比べて決定的に異なるのは、Bluetoothがキャリアセンスが不要である点だ。一般に移動体通信ではTDMA、IEEE802.11やHomeRFのSWAPではCSMA/CD(※7)などのアクセス制御方式でキャリアセンスを行なっている。いわば高速道路では、きちんと前後を確認してから車線変更を行なっているわけである。しかし、Bluetoothでは通信中か否かを問わず、チャネルを1秒間に1600回も切り替えながら、データを送り続ける。そして、衝突した場合はコリジョンディテクトとして再送を行なう。これは2.4GHz帯域での他の通信方式との干渉が予想されるためで、キャリアセンスにかかるオーバーヘッドを解消する方法を採用したのだ。これにより、Bluetoothは信号の状態が良好なときだけでなく、激しい干渉が起こる状態でも性能の低下を段階的に抑え、安定的な通信を行なえるようになっている。
しかし、考えてみれば非常に傍若無人な通信方式といえるかもしれない。同帯域の他の通信に干渉してまでも伝送効率を優先させるわけだから、当然電波法上好ましい伝送方式ではない。このためエチケットルールとして、消費電力も高く、干渉を与える範囲の広いクラス1デバイスは屋外での特定用途以外で製品化されるのは推奨されていない。また、使用されないときは、トラフィックが発生しない低電力モードに移行させることが求められる。
しかし、国内でも郵政省の官報により、このキャリアセンスレスの通信方式が利用できるようになった。これもひとえにBluetoothに対する期待の大きさからといえるだろう。
※6 周波数ホッピングスペクトラム拡散方式……スペクトラム拡散(SS)無線通信技術の一種でFHSSとも書く。一次変調でデジタル化した信号の中心周波数を、乱数を用いて変化(ホッピング)させる。通話の秘話性と干渉耐性が高められる一方、直接拡散方式に比べてスループットが落ちるという欠点を持つ。
※7 CSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)……IEEE802.3標準で定められた媒体アクセス制御(MAC)方式。Ethernetの場合、複数のノードが同一伝送路を共有するため、経路上にデータが同時に送られると衝突(コリジョン)を起こす可能性がでてくる。コリジョンが起こると送信データが破壊され、データの品質が保証できなくなってしまうため、CSMA/CDという方法で衝突を検出し、制御、管理する。CSMA/CD方式では、データを送るとき、まず伝送路上を見て他のデータが流れているかどうかを確認する。これをキャリアセンス(CS)と呼ぶ。そして、もし衝突が起こった場合はその衝突信号を検知し、ランダムな時間を待ってデータの再送を行なう「コリジョンディテクト(CD)」という作業を行なう。
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Bluetoothデバイスのネットワーク構成
Bluetoothは、単なるピアトゥピアのデータ送受信だけでなく、3台以上のBluetoothデバイスでネットワークを構築することができる。この柔軟で拡張性に富むネットワーク仕様が、ホームネットワークにも対応できるBluetoothの特徴になっている。
Bluetoothデバイスのネットワークは通信範囲内の最初のデバイスが「マスタ」として機能し、その後からマスタへのリンクを確立したデバイスが「スレーブ」として参加するという形で構成される。マスタはデータ送受信の周波数のホッピングパターンを決定する権利を持ち、スレーブはマスタとリンクを確立することで他のスレーブとデータの送受信を行なう。こうしてBluetoothデバイスで構成されるネットワークは「ピコネット」と呼ばれ、最大7台までのBluetoothデバイスが参加できる。また、マスタは他のピコネットのスレーブになることが可能なため、ピコネット同士をデイジーチェーン(数珠繋ぎ)接続した「スタッカネット」を構築することも可能だ(図5)。Bluetooth SIGでは伝送範囲100mのクラス1デバイスより、このピコネットと100個まで構成可能なスタッカネットをうまく利用することで、広い伝送範囲をカバーするアプリケーションの実装を推奨している。
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図5 最大7台のBluetoothデバイスによってピコネットを構成。さらに別のピコネットに属するマスタとスレーブが通信することで、スタッカネットが構成される。各デバイスにはActive Member Addressとは別に8bitのMACアドレスがふられ管理対象となる |
データ送受信までの手順は図6のとおりである。まったくリンクの確立されていないStandbyモードの状態は、チャネルを変更しながらつねに同じホッピングパターンで他のデバイスからのメッセージを待っているだけである(リッスン状態)。しかし、伝送範囲内のいずれかがデータ送受信などのサービス獲得に動き出すと、そのデバイスがマスタになり、周辺のデバイスをスキャンして認識するという作業に入る(Inquiryモード)。スキャンしてひっかかったリッスン状態のデバイスは、「Active Member Address」という3bitのアドレスをふられ、スレーブとして機能することになる。マスタからメッセージを受けたスレーブは、マスタと同じホッピングパターンで動作を開始し、その後認証と鍵の受け渡しというプロセスを経て、データの送受信に移る(Activeモード)。このプロセスで、送受信データの盗聴や漏洩を防ぐための認証と暗号化の機能が標準で用意されているのもBluetoothの重要なポイントといえる。
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図6 Bluetoothデバイスの状態を表わす7つのモード。実際にデータの送受信を行なうためにはサービスの獲得に乗り出したデバイスがマスタとして機能し、スレーブとのコネクションを確立する。一方、通信していないときは、Hold、Park、Sniffなどの低電力モードが選択できる |
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IrDAの反省から生まれた相互接続への執念
Bluetooth デバイスは、半導体メーカーから提供されるチップセットにデバイスメーカーが開発したミドルウェア、アプリケーションを組み合わせることで実現される。ロイヤリティ無料で製品化が行なえるのが大きなメリットだ。一方で、Bluetooth SIGは通信プロトコルやリンク管理はもちろん、ミドルウェアに関しても「プロファイル」というソフトウェアスタックにより、各デバイスの実装をこと細かく規定している。Bluetoothではこれらプロファイルをデバイスにあわせて実装しない限り、Bluetooth対応デバイスとして認定されない。
これはBluetoothデバイスの相互接続性の確保に最大限の注意を払われているからだ。また、相互接続性に問題を抱えたIrDA(※8)と同じ轍を踏まないようにするためでもある。IrDAのインターフェイスは、ノートパソコンやPDAに標準的に搭載されているが、利用するユーザーが多いとはいえない状況だ。遮蔽物に弱い、速度的に不足というデメリットはあったが、普及しなかったもっとも大きな理由はやはり相互接続性である。OSとアプリケーションのバージョンの違いで利用できるはずのデバイスが利用できなかったというケースは多い。一般に標準仕様に準拠したデバイスであっても、各社の製品への実装が異なることで相互接続が実現されないからである。そこでBluetoothでは単に通信プロトコルだけでなく、物理的なベースバンドのレイヤ構造から上位レイヤとのユーザーインターフェイスまできちんデバイスごとに定めているわけだ。
Bluetooth SIGには仕様にきちんと適合しているかどうかをチェックする機関があり、適合した製品には認可を与えることになる。つまりIrDAのように「準拠」という言葉はなく、適合するか、しないか、というシビアな拘束が行なわれるわけだ。Bluetoothデバイスの開発者は、あわせて1万ページ以上ある仕様書をもとに、デバイスにあわせた最低限必要なプロファイルを実装しテストを受けなければならない。この厳密な仕様があるからこそ、ワールドワイドでデバイス間の相互接続が実現されることになる。
※8 IrDA(Infrared-Data-Association)……1993年に結成された赤外線データ通信の標準化団体、あるいはその通信規約を指すことも多い。物理層、リンク管理やトランスポート制御を行なうデータリンク層のほか、RS-232Cエミュレーションを行なう「IrCOMM」、静止画転送の「IrTran-P」、電話帳やスケジュールなどのデータ交換を行なう「Ir-OBEX」などにアプリケーション層などの一連のプロトコルスタックにより構成されている。伝送速度は115.2kbps、4Mbps、16Mbps。ワイヤレスのデータ伝送方式の本命として、ノートPC、PDA、プリンタ、家電用リモコン、POS端末などに幅広く搭載されている。
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GAPとSDPデバイスプロファイル
13種類あるプロファイルは大きく分けて、すべての機器が実装しなければならない基本プロファイル「GAP(Generic Access Profile)」と「SDP(Service Discovery Application Profile)」と各デバイス用のプロファイルに分かれている。
GAPは、Bluetoothデバイス同士が最低限通信を行なえるよう、前述したようなデバイスの認識、コネクション確立や認証・暗号化などの手順を定めたプロファイルである。デバイスの種類ごとプロファイルは異なるが、すべてこのGAPがベースになっていると考えてよい。
一方SDPは、他のBluetoothデバイスがどのような機能(サービス)を提供しているか調べるためのプロファイルであり、接続時のスキャンとは別途行なう。動作は簡単で、デバイスが印刷する機能を持つのか、通話の機能を持つのか、周囲を見回して、各デバイスに登録しておくのである。SDPは、Bluetooth自体のディスカバリのほか、Sun Microsystemsの「Jini」やMotorolaの「Piano」、プリンタ・パソコンメーカー24社が主導する「Salutation」、Hewrett_Packerdの「JetSend」などのさまざまなサービスディスカバリの仕組みが利用できる。この中では、通信プロトコル仕様を問わないSalutationのマッピングがもっとも容易だが、将来的にはやはり組み込みJava端末とJiniの組み合わせが増えてくると思われる。これにより最終的には、未知のBluetoothデバイス間でも、ドライバなどを自動ダウンロードして利用することができるようになる。
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図7 Bluetooth SIGで現在決められている13種類のプロファイル。すべてのデバイスに実装する必要のある汎用アクセスプロファイル(GAP)とサービスディスカバリアプリケーションプロファイル(SDP)の2種類のほか、シリアルポートプロファイル、音声通話用のプロファイル、赤外線通信用のプロファイルなどが用意されている |
このGAPとSDPを実装した上で、コードレス電話であれば電話用の「TCS(Telephony Control Specification)バイナリプロファイル」、FAXやヘッドセットのようなRS_232Cを経由したデータ伝送を行なうデバイスであれば、シリアルポートプロファイルのそれぞれ必要なプロファイルを実装する。ユニークなのは、IrDAで用いられるOBEX(OBject EXchange Protocol)をプロファイルとしてBluetoothで採用することで、ファイル転送やデータの同期などが可能になる点だ。これにより既存のIrDAアプリケーションを再利用して、Bluetoothデバイスに流用することができる。
これらプロファイルは、いわば「黒電話のダイヤル」のようにBluetoothデバイスとして最低限の機能を提供するためのものである。各デバイス独自の機能をのせる場合は、これらのプロファイルを搭載した上に独自にソフトウェアを開発する必要がある。
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Bluetoothデバイスがまわりを埋め尽くす日
Bluetoothは、現在半導体メーカーによるチップセットやモジュールの開発が着々と進行している状況で、2000年の夏から携帯電話、パソコン、家電の順に製品化されることになる。1999年末にはEricssonがいの一番にBluetooth対応の携帯電話とヘッドセット(※9)を発表している。COMDEX/Fall '99では、携帯電話、PCカード、デジタルカメラなどの試作品のほか、SonyがBluetoothインターフェイスを備えたメモリスティック「Infostick」、NokiaがBluetooth携帯電話から利用可能な自動販売機などを参考展示した。
製品が出た後もBluetoothインターフェイスLSIの集積化と量産効果による低価格化が進む。そして、2001年の春にはBluetooth SIGが普及のための最低ラインとして定めた「1チップ化・5ドルの生産コスト」が達成され、爆発的な普及を迎えることになる。これが決して夢物語でないのは、Bluetoothが業界標準として完全に認知されたからである。標準仕様が決まったあとは、インターフェイスLSIの機能的な差はもはやあまりなく、むしろ闇雲に製品化と低価格化を追求していかなければ、他社との競争に勝てない。
MicrosoftのBluetooth SIG参加により、Windows OSへの搭載も近くなり、Universal Plug & Playにも取り込まれる。また、国内ではNTTドコモやIDO(日本移動体通信)という大手キャリアが、次世代携帯電話サービス「W_CDMA(※10)」でBluetooth採用を決めているという追い風がある。とにかく今までになく製品化が早いという点は間違いないようだ。
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図8 Bluetoothのソフトウェアスタック。半導体メーカーの提供するモジュール、チップセットと、HCIの上位レイヤで動作するホストに別れる。ホストの開発に時間がかかるため、製品化に際してはサードベンダーのソフトウェアスタックを利用する場合が多くなると考えられる |
※9 ヘッドセット……ヘッドホンとマイク一体型のデバイスで、ハンズフリーでの通話などを実現する。1999年11月の道路交通法改正により運転中の携帯電話の使用が禁止されたため、こうした機能を搭載したアクセサリは注目されている。Bluetoothでも、ヘッドセットプロファイルなどを用意することで、ヘッドセットから携帯電話を介したハンズフリー通話を実現できる。
※10 W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)……限られた帯域幅を多くのユーザーで有効に利用するための多元接続方式の1つ。CDMAと技術的に大きな違いはない。ただ、移動体通信として現在用いられているcdmaOneの帯域幅1.25MHzに比べて広い帯域を使うという点が異なっている。ただ、一般に「W-CDMA」という場合、次世代移動体システム「IMT-2000」の無線通信として日本が提出した仕様と実際のサービスを指すことが多い。W-CDMAのサービスでは、Webブラウズやメールのほかに動画配信や遠隔医療、テレビ会議など幅広いアプリケーションが提供される。DDI、IDOが2000年夏、NTTドコモが2001年の3月、日本テレコムが2001年秋にそれぞれサービス開始を目指している。
※ HCI(Host Controller Interface)……モジュールとホストの間で行なうやりとりを規約したインターフェイス。Bluetoothでは、ホストからモジュールを制御するためのコマンド、他のBluetoothデバイスとのリンクや状態をホストに通知するイベント、実際に送受信されるデータのパケットタイプが用意されており、トランスポート層からピコネット内のBluetoothデバイスの制御を可能にする。
※ Link Manager……他のBluetoothデバイスとの通信を確立・制御するためのサービス。LMP(Link Manager Protocol)を経由し、他のデバイスとの接続を確立し、データの送受信を行なう。具体的には、1接続の確立、2ネームリクエスト、3デバイスの認証、4データあるいはデータ/音声のモード設定、5パケット交換および、6データ送受信、7Sniff、Hold、Pageなど低電力モードのセットアップ、などを行なう。
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高速化と多彩なプロファイル 次期Bluetoothはもっとすごい!
さて、1999年12月7日〜9日まで行なわれた「Bluetooth Developers Conference」では次期Bluetoothの仕様も少しずつ明らかになってきた。同カンファレンスでは新たに12のワーキンググループが創設され、高速化やプロファイルの仕様策定などが行なわれる。速度に関してはBluetooth「Radio2」というワーキンググループが担当しており、現在の2倍の2Mbpsを最低ライン、オプションで10Mbpsの仕様も用意されるとしている。特に10Mbpsになれば、速度的にもワイヤレスUSBとしての利用価値が飛躍的に高まることになる。一方で、AV機器、自動車、PANなどのプロファイルの策定も始まり、より広範囲なデバイスでの採用が急ピッチで進められる。当然、相互接続性や電気干渉のほかにも、帯域保証がないため動画伝送などを行なうとコマ落ちなどが予想される、ホームネットワーキングでデバイス間の管理を行なうアプリケーションがない、といった課題も残っている。まずは実績と製品化を進めることで、実用度も高まっていくことになるだろう。
将来的には、やはりアプリケーションが不可欠になる。つまり、iモードのような魅力的なコンテンツやサービスが提供できなければ、既存の携帯電話やパソコンの買い換え需要につながらないからだ。チップセットの低価格化が実現するのと同時に、こうしたアプリケーションの開発が本格化していくことになるだろう。
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