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「単なるデジタル技術ではなく、文化を残すための発明」――電子書籍ビジネスコンソーシアム発足


2003年9月10日

電子書籍ビジネスコンソーシアム発起人一同(※1)は10日、都内で記者会見を開催し、10月1日に電子書籍ビジネスコンソーシアムの設立総会を開催すると発表した。会見には、発起人19名(4名が都合により欠席)のほかに特別顧問として漫画家の里中満智子氏、元インテル(株) 会長の西岡郁夫氏、評論家の立花隆氏(立花氏のみビデオメッセージでの参加)が出席し、電子書籍の意義やコンソーシアムの目的、活動内容について紹介した。

※1 発起人代表
(株)頸草書房 代表取締役社長 井村寿人
松下電器産業(株) パナソニック システムソリューションズ社 社長 秋山正樹
(株)東芝 執行役上席常務 マーケティング統括本部長 高木利武
(株)イーブックイニシアティブジャパン 代表取締役社長 鈴木雄介(以上敬称略)

発起人代表4名
発起人代表の鈴木雄介氏(右端)ら

「イメージベースで管理する電子書籍は国境を越えて世界で使われる」
――立花隆氏

立花隆氏
ビデオメッセージで登場した立花隆氏

最初にビデオメッセージで登場した立花隆氏は、「2003年は画期的な年になる。グーテンベルグの活版印刷発明から500年あまり過ぎ、“電子ブック”の立ち上げから10年以上過ぎるが、これまでは最初に広げた風呂敷がなかなか実行されない助走期間だった。今回の“電子書籍”は本をテキスト(フォントベース)ではなく画像(イメージベース)で管理するところが大きく異なる。“E Ink”(※2)を開発したMIT(マサチューセッツ工科大学)のジョゼフ・ジェイコブソン(Joseph Jacobson)氏は、本が電子的に収まる“ラストブック”を提唱していた。1冊の本で世界中に流通する書籍や雑誌の情報を入手できる世界がくると言っていた。イメージベースで管理するこの電子書籍は、既存の書籍製造過程を変化させることなく、また既存の本も1回スキャンするだけで取り込めるため、過去の資産を有効に受け継ぐことができる。もともとは、中国が学校で配布する教科書を電子化しようとしたのが始まりで、マーケットはとてつもなく広い。同様のことは世界中で起こるだろう。本を刷りなおすことなく、最新の情報が手に入る。新しいメディアとして、電子書籍は脱皮しようとしている」と、電子書籍の意義を語った。

※2 E Ink イーインク、マイクロカプセルに電気信号を与えることで白黒を切り替え表示する、薄型表示装置の基礎技術



「知識と能力を結集して、読者サービスを提供するチャンスを広げたい」
――鈴木雄介氏

鈴木氏は、コンソーシアムの位置づけについて、「どこ(法人)でも、誰でも参加できる、オープンな部会を目指す。これまではモノを作る側からの提案が多かったが、これからは読者が求めるものを、使いやすいものを念頭に考えていく。ビジネスコンソーシアムという名前をつけているが、ビジネスだけでなく文化継承のための活動も心がける。コンソーシアムの考えに賛同し、協力してくれる皆さんの知識と能力と友情を結集して、本が広くいろいろな方に読まれる機会を増やしていきたい」と説明した。

松下は韮ookを秋頃に発売、東芝も対応ハードウェアを開発中

松下電器産業が今秋発売予定の『韮ook』
松下電器産業が今秋発売予定の『韮ook』。総低価格は3万円台という

電子書籍の最初の対応ハードウェア『韮ook(シグマブック)』を提供する(今秋発売予定、価格は3万円台を想定)松下電器産業の秋山氏は、「狽ニいう文字には“蓄積する、積分する”といった意味がある。日本初の記憶型液晶パネル(電源を切っても表示が消えない)を採用し、単3電池2本で3〜6ヵ月の連続使用が可能。画面は見開き2画面のモノクロ表示(7.2インチ/XGA表示、180ppi)で、中間階調も表現できる。海賊版対策として、メディアは著作権保護機能を持つSDメモリーカードを使い、専用フォーマット“SD-ePublish”で書き込む。コンテンツの流通方法は、パソコンを使ってダウンロードするほか、書店での書き換えサービスも検討している」と、秋頃の実用化にある程度のめどが立っていることを強調した。

また、記者の質問に答える形で、東芝の高木氏が「東芝でも対応ハードウェアを開発している。パソコンベースなので大きくて重く、まだお見せできないが、年末から来年にかけて発表できる予定だ」と明らかにした。

「先輩が生み出した文化を後世に残すための重要な発明」
――里中満智子氏

里中満智子氏
漫画家の里中満智子氏

コンテンツを提供する側からの意見として、里中氏は「現在の流通形態では、環境によって知識や情報に格差が生じてしまう。電子書籍はこれを解決してくれるだろう。また、出版業界が危機を迎えている理由のひとつに住宅事情があると思う。買った本を取っておきたいが、部屋が狭くて手放さなければならない。すると、次に本を買うときに、本の大きさを気にしてしまう。本来なら、本の内容や情報に価値があるのに、本のサイズや置き場所の事情で買うことを躊躇してしまう、といった悩みが解消されることも大きい。もうひとつ、漫画家として気になっているのが、今書店で手に入るのは売れている一部のタイトルに限られるという現実。過去に発売された優秀な本が、書店に置く場所がないという理由で埋もれてしまっている。漫画大国といわれる日本でもそうした状況だ。いつか誰かとめぐり合うために本は流通しているが、書店で購入者とめぐり合うのは極めて小さな確率でしかない。どこにいても好きな本を探せる、読める環境を整える必要がある。電子書籍は、単なる技術の話ではなく、先輩が生み出した文化を後世に残すための重要な発明だ。既存の漫画や書籍が電子書籍になれば、置き場所に困ることなく蓄積されていく。なくなることはない。これを実現する2003年は、将来振り返ってみると記念すべき年になるだろう」と述べた。

なお、説明会の最後のQ&Aセッションで、記者から「端末の価格が高いのではないか。携帯電話のように、端末の値段を0円に近い低価格にして、コンテンツやサービスで収益を上げるべきではないか」と意見が出されると、秋山氏は「メーカーとして、本体(ハードウェア)で儲けを追求してはいない。コンテンツで利益を回収する仕組み(ビジネスモデル)が確立すれば、現在の想定(3万円台)の半額程度でも売れるだろう」と答えた。



(編集部 佐久間康仁)





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