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【2003 JavaOne Conference Vol.5】ここだけで読める“JavaOne”見聞録


2003年6月19日

“2003 JavaOne Conference”(以下、JavaOne)全体の大きな流れとしては、初日で大きなテーマはほぼすべて提示されつくした一方、2日目に急遽発表された米Hewlett-Packard社と米Dell Computer社のJava搭載のニュースが最も大きな話題となったと言ってよさそうだ。しかし、開発者会議としての“JavaOne”では、必ずしも大きなニュースだけが重要ということはなく、そこかしこでさまざまな動きが同時並行的に見られる。それを丹念に拾っていけば、一般に報道される“JavaOne”とはまた違うナマの姿が浮かび上がってくるのだが、残念ながら到底一人では全てを見ることはできない。しかしながら、多少目に付いたものもあるので、ここではそうしたちょっと細かい見聞録をまとめてお伝えしたい。

■Gosling氏の関心事

“Father of Java(Javaの父)”と紹介され、“JavaOne”来場者であれば知らぬものはいないと思われるJames Gosling(ジェームス・ゴスリング)氏は、“JavaOne”会期中は実に精力的に動き回り、多くの参加者と触れ合う機会を持っている。しかし、最近の氏の関心はJava言語そのものから応用分野へ移っているようだ。また、これは趣味の一環だろうが、怪しげなガジェット制作にも熱心なようである。

今回の“JavaOne”のトピックとして最も一般の関心を集めるのではないかと思われたのが、NASAの火星探査プロジェクトである。2基打ち上げられる予定の探査機のうち、“Spirit”と名付けられた最初の1基がまさに“JavaOne”初日の最初のGeneral Session開催中の10:58(Pacific Time)に無事打ち上げられた。しかし、2日目のGeneral Sessionに登壇したGosling氏の講演の中でこのプロジェクトが紹介されたものの、その成果についてはあっさりと「今回はJavaは搭載されていない」で片づいてしまった。残念ながら、ここ数年に渡る“Mars Roverプロジェクト”への取り組みは、想像するに時間切れに終わったようだ。

今回は打ち上げられてしまったためか、“Mars Rover”の実物は登場せず、火星表面で探索中のRoverの想像図だけが公開された
今回は打ち上げられてしまったためか、“Mars Rover”の実物は登場せず、火星表面で探索中のRoverの想像図だけが公開された

代わりに、ということでもないだろうが、Gosling氏の講演にはゲストとしてNASAのDepty Architect, Mission Data SystemsであるDaniel L.Dvorak博士が登場し、現在開発中の“Rocky7”の実物を公開しつつJavaと宇宙探査システムの関連について語った。Rocky7はNASAのジェット推進研究所人工知能(AI)グループで研究が続けられている無人探査機で、今回火星に打ち上げられたMars Roverの後継機と位置づけられるようだ。これがいつ完成し、どの惑星に送られる計画なのかははっきりしないが、Java宇宙進出の夢はまだ継続中といったところだろう。

Daniel L.Dvorak博士(Depty Architect,Mission Data Systems)と開発中の“Rocky7”
Daniel L.Dvorak博士(Depty Architect,Mission Data Systems)と開発中の“Rocky7”
Daniel L.Dvorak博士(Depty Architect,Mission Data Systems)と開発中の“Rocky7”とJames Gosling氏
Daniel L.Dvorak博士(Depty Architect,Mission Data Systems)と開発中の“Rocky7”とJames Gosling氏
“Rocky7”のハードウェアスペック。3組のステレオカメラで外界を認知しつつ自立的に探索を行なう6輪車
“Rocky7”のハードウェアスペック。3組のステレオカメラで外界を認知しつつ自立的に探索を行なう6輪車。CPUはPowerPC 750で、メモリが256MBというのがずいぶん少ないように思える
“Rocky7”に搭載されるソフトウェアスタックの中のRTSJは、リアルタイムJavaが使われる予定
“Rocky7”本体と、地球上での支援システムのソフトウェアスタック。支援システムにはSolaris上でJDK1.4が使われている。また、“Rocky7”に搭載されるソフトウェアスタックの中のRTSJは、リアルタイムJavaが使われる予定

ちなみに、非公式に聞いた話では、以前“JavaOne”会場に持ち込まれたMars Roverの価格は3億円とも30億円とも言われ、鎖でグルグル巻きの厳重な保管体制を採った上で、さらに軍の護衛が派遣されてきたのだという。受け入れ側も大変な苦労をしたようだが、そうまでして“JavaOne”会場に持ち込んだのも、ただ“Goslingのために”ということだったらしく、NASA内部にもたくさんのGoslingファンが居ることがうかがえる。

■開発者向けイベントの数々

“JavaOne”では、公式プログラムとしてもさまざまな“お楽しみ要素”が組み込まれている。たとえば、今年の例ではレセプション(展示会場で軽食とアルコールが供される立食パーティ)、Hockey and Broom Ball(熱心なアイスホッケーファンであるSunのCEO、Scott McNealy(スコット・マクニーリ)氏が率いるSun社内ホッケーチーム“Sun Dukes”と他社チームの試合(今年の相手は米Apple Computer社)、After Dark Party(パーティ。アトラクションとして今年は人気ミュージカルのダイジェスト版が上演されたようだ)、JavaOne Coding Challenge(プログラミングコンテスト)等々、さまざまなイベントが行なわれた。

一方、大規模なイベントでは通例のことだが、企業が参加者を募って独自に開催するイベントもいろいろと行なわれる。もちろん、参加者であるJava開発者をターゲットに自社製品をアピールしたい、という動機で行なわれるものが大半だが、多くはパーティやディナーといった魅力的な形式で参加者を惹き付ける。今回は機会があって、米Compuware社が主催した“Panel Dinner”を覗いてみた。米Compuware社は主にメインフレームをターゲットに各種ツールを提供するソフトウェアベンダー(ISV)だが、今回『OptimalJ』という『J2EE』開発ツールをリリースしてJava市場に本格参入した。当然、このPanel Dinnerでも『OptimalJ』の優位性をアピールするのが目的だろうという想定で参加したのだが、実際には『J2EE』のDesign Patternsに関する著書の執筆者を多数集めたパネルディスカッションが真剣に展開され、自社製品そっちのけでDesign Patternsに関してパネリストと参加者がQ&Aで議論を交わすという、ある意味実に“JavaOne”らしい展開となっていた。筆者の英語力では詳細な議論の内容がよく分からなかったのだが、概略、Design Patternsに基づく開発効率化にやや懐疑的な来場者が多いようで、「それがホントに現場で役に立つと思うのか?」といったスタンスの質問をパネリストにぶつけ、パネリストがDesign Patternsに基づくアプローチの有効性を熱心に説く、というサイクルの繰り返しが見られたように感じた。こうした個別セッションの熱気は、開発者会議としての“JavaOne”の本質とも言えるものだろう。


米Compuware社主催のPanel Dinnerの様子。パネリストを見つめる来場者の目は真剣で、Q&Aセッションでは次々と質問がぶつけられていた

■ゲーム市場への取り組み

今年の“JavaOne”のトピックとして、ゲーム関連のセッションとデモ展示等で構成された“Video Game Summit”が併設されたことが挙げられる。ゲーム市場に関するJavaの取り組みはずいぶん前から地道に続けられている。“Java3D API”の整備は、もちろんビジネスアプリケーションでの高度なグラフィックスの利用を想定しつつも、一方でゲームへの応用も考えられている。PCユーザーには“Javaは遅い”という認識が定着しているようだが、実際には十分なクオリティと思えるようなJavaで記述された3Dゲームがさまざまデモされていた。ゲーム機ではプラットフォームのハードウェアの違いが大きく、ある機種向けに開発したゲームソフトを他機種に対応させるのは、移植というよりは新規開発に近い手間が掛かると言われる。Javaはこの問題を効率的に解決できる可能性を備えており、開発者からの期待も高い。特に携帯電話への採用拡大など、Javaプラットフォームが急拡大しつつある現状では、ゲームソフトに対する需要も高まるはずで、ここに次の成長市場を見ている開発者も多いようだ。日本国内では、電車の中などで携帯電話を使ってゲームで遊んでいるユーザーの姿を普通に見かけるようになったが、日本のこの状況も米国の開発者がゲームに目を向ける強力な動機になっているのは間違いないだろう。


Video Game Summit会場の様子。さながら大規模なゲームセンターで、ずらりと並べられたPS2上でさまざまなゲームが動いており、来場者は自由にプレイを楽しみつつ、Java 3Dゲームの実力を確認していた(のだと思うが、単に楽しんでいただけかも)

クライアント側での3Dプログラミング等も興味深い話題だが、筆者が見た中では“MMOG”(Massive Multiplayer Online Game:大規模マルチプレーヤオンラインゲームとでも訳すか?)向けのサーバーシステムをどう構築するか、というセッションが興味深かった。大規模なオンライゲームシステムでは、同時にプレイしているユーザーが増えると当然ながらサーバーの負荷が高まるが、複数のサーバーを用意して負荷分散するのもかなり大変だし、システムの利用効率を高めることも困難だ。これを、JMS(Java Message Service)を利用し、利用者間や利用者とゲームサーバーとのやり取りをメッセージの交換と見なして適切に制御してやればJava(『J2EE』)のフレームワークを利用して“MMOG”向けの共通サービスを構築できる、というのがセッションを行なった米Zona社のアイデアである。これは現在普及しはじめている企業の業務用のエンタープライズシステムの構造と類似しており、Javaの適用分野の拡大としてはごく自然なものに思われる。プラットフォームが成熟してくれば、そこに載せるアプリケーションはアイデア次第で予想外の広がりを見せると言うことの好例ではないだろうか。

米Zona社の“MMOG”プラットフォームの基本アーキテクチャ
米Zona社の“MMOG”プラットフォームの基本アーキテクチャ。サーバーを分散し、JMS(JavaMessage Service)で負荷分散と協調動作を実現する
ona社の“MMOG”プラットフォームのソフトウェアスタック
米Zona社の“MMOG”プラットフォームのソフトウェアスタック。水色の層から上がサーバーサイドで動作する部分。さまざまなゲーム機に機種を問わず対応できる点がクライアントサイドでのメリットとなる
米Zona社の“MMOG”プラットフォームを使ったゲームのデモ
米Zona社の“MMOG”プラットフォームを使ったゲームのデモ。参加者がそれぞれ操作するバギーが砂漠を走り回り、他のバギーを見つけたら攻撃して倒す、という比較的単純なものだが、Javaのサーバーシステムでちゃんとゲームになっている、という驚きは感じられた
米Zona社がシステムプラットフォームとして推奨しているのがブレードサーバー
米Zona社がシステムプラットフォームとして推奨しているのがブレードサーバー。必要に応じて柔軟にリソースを増減しつつ、大トラフィックに対応できるというのが理由だ。もちろん、実際のハードウェアにはSunのマシンが使われていた

■San Franciscoの街中で

さて、“JavaOne”は毎年米国San Francisco市内の中心部からやや南よりのSOMA(South of Market)と呼ばれる地区に建てられたMoscone Convention Centerで開催されている。“JavaOne”参加者には“JavaOne”のロゴが大書されたカバンが配られることもあって、最盛期にはSan Franciscoの中心街が“JavaOne”一色に染まってみえたものだ。しかし、今年は参加者数も昨年よりは増加したようだが最盛期にはまだ遠く、街を染め上げるには至らなかった。

San Franciscoの街はイラクとの戦争やSARSの流行による旅行者の減少の影響を強く受けているようでつぶれてしまった店が目に付いた。たとえば、著名なおもちゃ屋のFAO SchwarzのSan Francisco店がつぶれていたのが今回大きな驚きだったし、Discovery Channel Storeもなくなっていた。Eddie Bauerは閉店セール中だったし、日航ホテル裏手の寿司屋「勘太郎」もつぶれていた。しかも、つぶれた店舗前の張り紙を読んだり、地元事情に詳しい人に聞いたりしたところでは、この5月〜6月にかけてパタパタと潰れた店が多かったようだ。

というわけで、かつては街全体を覆ったかに見えた“JavaOne”の熱気も、今回に関してはMoscone Center内に押し込められ、例年以上に冷たい風が吹く米国San Franciscoの6月はその冷え込みで“JavaOne”来場者を震え上がらせていたのであった。

(渡邉利和)





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