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【2003 JavaOne Conference Vol.4】Javaプラットフォームのさらなる普及に向けて


2003年6月17日

会期中に発表された大きなニュースとしては、米Hewlett-Packard社と米Dell Computer社が、それぞれのPC製品に米Sun Microsystems(以下、Sun)のJava実行環境を標準で搭載することに合意したというものがある。サーバーサイドでの『J2EE』と、軽量組み込み端末向けの『J2ME』の利用は順調に拡大している一方で、標準的なPCを想定した『J2SE』の普及は遅れている。これには、米Microsoft社との間で展開された訴訟の影響もあった。今回の発表で、PC市場で大きなシェアを持つHPとDellが『J2SE』を標準搭載することになったため、今後はアプリケーション開発者の側でも「Javaプログラムが実行可能である」という前提を置くことが不自然でなくなることが期待され、PC用のアプリケーションをJavaで開発しやすくなるだろう。合わせて、LindowsOS 4.0にもJava環境が搭載されることが発表されており、PC向けのJava環境の拡大もようやく具体的な動きを見せてきた。

Jonathan Schwartz(ジョナサン・シュワルツ)氏
2日目のGeneral Sessionの冒頭で米Hewlette Packardと米Dell ComputerがJava実行環境の標準搭載を決めたというニュースを発表するJonathan Schwartz(ジョナサン・シュワルツ)氏

また、一般消費者向けのブランディングキャンペーンとして開始されたウェブサイト“java.com”も重要な役割を果たすはずだ。java.comにはJava実行環境を簡単にダウンロードするためのボタンも用意されており、たとえるなら現在のAcrobat(PDFリーダ)などのように、ユーザーが必要を感じたときに気軽にインストールできるようになるはずだ。従来PCはその大半がWindowsをOSとして使用しているため、Windowsネイティブアプリケーションを作成するほうがメリットが大きいとされ、Javaは普及しないと言われてきた。しかし、サーバー側でも携帯端末でもJavaが主流といえる状況になりつつある現在、どうせなら同じJavaでPC用アプリケーションも開発してしまおうと考える開発者は今後増えていくだろう。PCのことだけを考えるならWindowsネイティブアプリケーションにもメリットは多いが、Javaの欠点とされてきた部分は解消されつつある。

■ソフトウェアのサービス化

最終日の朝に開催されたGeneral SessionではSunのCEO、Scott McNealy(スコット・マクニーリ)氏が講演を行なった。その中で氏は、ソフトウェアを大きく“Plastic-Wrapped”“Rack-Wrapped”“Gift-Wrapped”の3種類に分類して見せた。携帯電話や家電製品等に組み込まれて使われるソフトウェアは従来組み込みソフトウェア(Embedded Software)と呼ばれているものだが、これを“プラスチックにくるまれた(Plastic-Wrapped)”と表現して見せたわけだ。一方で、Sunが取り組んでいるSunONEサーバーソフトウェア群などは、ラックマウントが主流となった現状から“ラックにくるまれた(Rack-Wrapped)”と表現され、現時点でもWeb上で利用するサービスとして提供されているソフトウェアは“Gift-Wrapped”と呼ばれたわけだ。


Chairman, President, and Chief Executive OfficerのScott McNealy(スコット・マクニーリ)氏

これは単なる言い換えのようでもあるが、ソフトウェアが消費者の目に直接触れる製品であった時代が終わりつつあり、あくまでも提供される機能のほうを重視するという方向に転換しつつあるという認識の反映である。そして、こうした状況になってくれば、セキュリティーやネットワーク対応を最初から意識し、容易な開発をもサポートしつつあるJavaが大きなメリットを発揮する、というところに繋がっていく。ちなみに、現在注目を集めているオープンソースソフトウェアなどは、一部のプロフェッショナル向けの“くるまれていない(Unwrapped)”ソフトウェアに分類できるそうだ。

Plastic-Wrapped Softwareのイメージ
“Plastic-Wrapped”ソフトウェアのイメージ。携帯電話をOSの種類で選ぶ人はいない、という発言があったが、まさに機能とサービスだけが問題になる用途である
Rack-Wrapped SoftwareはSunがこれまで中心的に取り組んできた分野
“Rack-Wrapped”ソフトウェアはSunがこれまで中心的に取り組んできた分野であり、今後もSunはこの分野を中心に事業を展開することになる
サービスとして認識している分野
イメージとしてはちょっと分かりにくいが、既にユーザーがソフトウェアの存在を意識せず、サービスとして認識している分野、ということだろう

■JavaOneが終わって

Javaには過去何度か転換期と呼べる状況があったと思うが、現在迎えつつある「消費者向け市場へ本格的に浸透し始めた」状況は確かに大きな転換の1つであろう。一方で、純粋な言語仕様の面に目を向ければ、Metadataの導入など、EoDの実現のために追加機能を背負い込むことにもなっている。こうした拡張についてJames Gosling(ジェームス・ゴスリング)氏は、「既にある機能で同じことが実現できないわけではなく、その意味では無駄な追加と言うこともできなくはない」という趣旨のコメントを聞かせてくれた。また、SunのChief Engineerであり、JCP(Java Community Process)のChairを務めるRob Gingel氏は、「開発を容易にシンプルなものにしようとする過程で言語仕様が複雑化している面はある。少なくとも、コンパイラーの構造が複雑化することは避けられず、肥大化/複雑化といった性格があるのは間違いないだろう。ただし、目的は言語を単純化することではなくユーザー(この場合は開発者)に洗練された使いやすい機能を提供することだ。そこを単純化するためには、インフラとなるソフトウェアは高度に複雑なものになるのは避けがたい。現在ではネットワークにさまざまな種類のデバイスが膨大な数接続されており、そこに向けたソフトウェアを開発するためのJavaの言語仕様は、さまざまなユーザーが要求する幅広い機能や能力を満たす必要があり、単純化の方向に逆戻りすることは考えられないだろう」という見通しを語ってくれた。

JCP(Java Community Process)が発足し、ユーザーが言語仕様策定に直接関与するようになってから、Java APIは拡大の一途をたどってきた。その流れが完全に固定化したというのも、現時点で明らかになってきた転換の1つの姿だろう。これまではあまり一般の目に触れない場所で使われてきた、縁の下の力持ち的な存在だったJavaをもっとメジャーな存在にできるかどうか、Sunを含めたJavaコミュニティの今後の努力が今回の“転換”の価値を決めることになるだろう。

(渡邉利和)





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