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JavaOneと日本市場の動向


渡邉 利和(toshi-w@tt.rim.or.jp) [著]
2001年12月25日

もうずいぶん前の話のように感じられるが、米国San Francisco以外の場所では始めてとなるJavaOneが、パシフィコ横浜で11月28〜30日の3日間で開催された。“本家”とまったく同じとはいかないものの、日本の状況がきわだったという意味ではそれもむしろよかったのかもしれない。


JavaOneの第1回は、1996年5月にSan Franciscoで開催された。以後、1997年は4月、1998年は3月と、年一回といいながらもおおよそ11カ月ごとに開催されたが、1999年、2000年、2001年は6月の開催となり、開催時期が固定され、定番イベント化する雰囲気を感じていた。これで、過去6回開催されたわけだ。

前回、2001年6月のJavaOneで、「秋に日本でJavaOneを開催する」とアナウンスして約半年後、今回の日本国内でのJavaOne開催が実現した。

逆風の中のJavaOne Japan

今回の日本でのJavaOne開催には、さまざまな逆風が吹いた。まず、“IT不況”“ドットコム・バブル崩壊”と呼ばれる経済状況、そして米国多発テロ、アフガニスタンでの「不朽の自由」作戦の開始など、2001年は実に暗い年であったとまとめてしまいたくなるほどの状況だ。直前に開催されたLas VegasのCOMDEXでも来場者が激減したと伝えられたし、筆者自身、6月のJavaOneを最後に米国には出かけていないのである。例年なら、秋にはいろいろなイベントがあるため、取材に米国に出かけない年はここ数年なかったことを考えると、確かに今年はイベントを開催しにくい状況であったのだろうと思う。今回のJavaOne Japanでも、米国からゲストやスピーカが本当に来日するのか、直前まで心配する向きもあった。

しかしながら、そうした懸念はとりあえずは杞憂に終わったようだ。Sun Microsystems米国本社からは、Scott McNealy、Ed Zanderといった経営トップは姿を見せなかったものの、JavaOneの顔ともいえるChief ResearcherのJohn Gage氏や、オリジナル開発者でSun FellowのJames Gosling氏、CTOのGreg Papadopoulos氏などが来日し、大きな存在感を持ってメッセージを伝えた。心配された来場者数も、最終的には7000名以上となり、プレス/アナリストは150名以上来場と、かなりの注目を集めたようだ。

日本では、大規模な展示会であれば数十万規模の来場者があるイベントが珍しくもない。数字だけを比べてしまうとJavaOne Japanの7000名はずいぶん少なく感じられるかもしれない。しかし、JavaOneは「展示会」ではなく、“Java Developer Conference”「Java開発者会議」である。そう考えれば、この参加者数はなかなかのものだと言ってよいだろう。

JavaOneが暗示したもの

最近のJava関連の話題といえば、中心となるのはJ2EEとJ2MEという、ラインナップの両端部分であり、間に位置するJ2SEは、最近ではMicrosoftがIEでのサポートをうち切ったというニュースがあったのが印象に残る程度で、あまり活発に動いている感じはしない。

なかでも、日本市場では特に組み込み機器向けのJava実装であるJ2MEへの注目度が高い。これはもちろん、世界でも最先端をいくモバイル機器市場だからである。NTT DoCoMoのiモード携帯電話機向けのiアプリがよく知られているほか、J-PHONE、auといった主要携帯キャリアはすべてJavaに取り組んでいるし、シャープのZaurusなどの各種PDAでの利用も拡大しつつある。

市場があるところに開発者がいる、というわけで、日本はJ2MEをターゲットにした開発に携わる開発者が多く活動している場所でもある。そのため、JavaOneもJ2MEが主要テーマとなると考えられていたが、実際基調講演などで取り上げられる話題はJ2ME絡みでモバイル機器での利用を想定したものが多かった。基調講演のゲストとしてNTT DoCoMo、J-PHONE、auの3社すべてが登壇したのも、日本らしい状況と言ってよいだろう。これだけを見ると、日本のJava市場は携帯電話の世界にしかないかのような印象を受けるほどである。

米国では5日間にも渡って開催されたJavaOneだが、日本では初めてということもあって3日間の日程が組まれた。そのため、全体の規模としてはやはりSan Franciscoに比べると小振りな印象だが、それでも基調講演4本、テクニカル/ビジネスセッションが計72本、BOFが32本行なわれ、展示会場の出展社数は68社となった。3日間でこなすには十分すぎるほどの量であり、日程は短いものの中身は濃かったと言ってよい。

しかしながら、若干の違和感もあったのは確かだ。San FranciscoのMoscone Centerでは、South Hallの入り口を入ると真っ先に目にはいるのは“Hacker's Lounge”であり、端末を叩き、ゲームに興じ、ポップコーンを頬ばってくつろぐ来場者の数に驚くことになる。うっかりすると、「アメリカ人は怠惰だから、会場に来ても遊んでばかりいる」なんて誤解をしかねない状況だが、これは見当違いというものである。JavaOneの本質はConferenceであり、Sessionにある。つまり、来場者は展示を見物に来るのではなく、目的意識を持って情報収集や勉強のために集まるのである。米国でも、Sessionのスケジュールはそれこそ学校の授業のようなもので、15分程度の休憩を挟みつつ、1時間のSessionが日に6回ほど繰り返されるのだ。今年のSan Franciscoの2日目のスケジュールを見ると、基調講演が朝8:30から2時間行なわれたあと、休憩が30分、その後は1時間のSessionの後15分の休憩、というサイクルを繰り返し、最後のSessionの終了は夜18:15となっている。全部のコマに出ると、計1時間45分の休憩を挟みつつ8時間話を聞き続ける、というスケジュールになるわけだ。JavaOneがいかに密度の高いイベントであるか、こうしたスケジュールからも分かるだろう。そして、これを5日間続けるのはいくらタフなアメリカ人にもさすがに荷が重いのだろう。かくしてHacker's Loungeが盛況となるわけだ。

今回のJavaOne Japanでは、スケジュールに関しては米国以上の密度であった。Sessionの間の休憩が明確ではなく、約10分という事になっていたのだが、1時間のSessionが6本並べられていた。熱心な来場者は、興味のあるテーマのSessionを渡り歩きながら朝から晩までJava漬けの3日間を過ごしたはずだ。そこで残念だったのは、会場の一番目立つ場所に置かれたのが展示会場で、Sessionの合間に疲れた参加者が休憩できる場所がSession会場のそばにはあまり用意されなかったことだ。まじめな日本人には、Hacker's Loungeのくつろいだ雰囲気は受け入れられないと考えた、というわけではなく、多分会場スペースの物理的な問題なのだろう。この点、展示中心のイベントなのか、開発者がSessionを聞くのが主目的なのか、やや曖昧な位置づけに感じられたことが今回のJavaOneの残念なところである。

とはいえ、Sessionに参加した来場者の意識の高さは印象的であった。タイトなスケジュールの中、多くのSessionが満席となっていたし、海外からのスピーカーが話すSessionでは同時通訳が提供されていたものの、最後の質疑応答になると英語で質問する日本人参加者の姿も目立った。こんなにも多くの日本人開発者がJavaの最新情報の収集に熱心に取り組んでいる姿を目の当たりにしたことが、今回のJavaOneの最大の収穫であったと感じている。

というわけで、悲惨な出来事ばかりが印象に残る2001年もまもなく終わろうとしている。いつまでも沈んだままでいるのか、それとも、来年はまた停滞した歩みを取り戻すべく動き始めるのか。JavaOne Japanを見る限りでは、日本でも“次の動き”に向けた準備が着々と進んでいるようなので、その点ちょっと安心できそうだ。ただ、JavaOne Japanでもホスト役を務めたJohn Gage氏はJavaOneの全世界展開の計画に言及し、今後アジア圏内での開催を考えていることを明らかにした。候補として挙げられたのが、中国とインドである。これらの国はIT分野でも日本を凌ぐ勢いの急成長を遂げており、ジャパン・パッシング(日本飛ばし)の動きとなって米国の注目を集めている国でもある。停滞している暇はなく、実は否応なしに世界規模の競争環境に放り込まれているという現実がこんな事からも伝わってくるわけだ。

というわけで、携帯電話のJava対応で世界をリードする立場の日本も、安穏としてはいられないようだ。なお、開催地が増えるために開催間隔を調整する必要があったのかどうか、来年のSan FranciscoでのJavaOneは3月の開催と発表された。その頃には米国行きを避ける風潮も収まり、多数の日本人開発者がSan Franciscoに集まることになるのではないだろうか。





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