コラム / Sun View
エントリーサーバの攻防
2001年11月20日
エントリーサーバの攻防
エントリーサーバと呼ばれる市場は、現在のところほぼIAサーバに席巻されつつある。なんと言っても価格が安く、処理性能もかなりのレベルに到達しているため、多くのユーザーにとっては実用的で魅力的な選択肢である。また、対応OSが幅広く、WindowsからLinuxやFreeBSD、Solarisまでも利用可能である。IAサーバは、現状では商用UNIXサーバと棲み分けができているように見えるが、「市場が違う」と無視し続けることが可能だとは思えない。全面的に競合する可能性を考えて、対抗可能な製品を用意する必要があるのではないだろうか。
Sunはこのほど、エントリーレベルサーバの最上位機種に当たる「Sun Fire V880」の販売を開始した。全体のラインナップの中での位置づけから言うと、おおよそ中間辺りになるだろう。とりあえず、UltraSPARC III搭載のSun Fireシリーズでみれば、ローエンドが4Uラックマウントで2CPUの280R(186万6000円〜)、ハイエンドが最大106CPUの15K(16CPU、16GBメモリで2億8236万9000円〜)というラインナップである。V880は、CPUは最大8個、メモリは1CPUあたり最大4GBで計32GB、価格は2CPU、4GBメモリの構成で548万円からとなる。15Kがちょっと飛び抜けた存在のため、イメージとしては中間といっても実質下から1/3あたりに位置する、と言うべきだろうか。
実は筆者が最初にリリースを眺めたとき、価格を一桁勘違いし、54万8000円だと思いこんだため、一瞬IAサーバ対抗かと誤解したのだが、改めて見直してみて勘違いに気づき、がっかりするやら驚くやらであった。IAサーバを見慣れた目からは、500万円以上もするサーバを「ローエンド」と呼ぶ気にはなれない。おおよそトップエンドの価格帯だと言える。ハードウェアの構成も違うので直接比較するのはあまり意味がないのだが、たとえば、Pentium III Xeonの700MHz(2MBキャッシュ)を4個搭載(最大8CPU)したCompaqのProLiant DL760が596万円でおおよそ同等の価格であることが参考になるかもしれない。当然、問題はコストパフォーマンスなのだが、単純に価格だけを数値として比較すれば、SPARCサーバのローエンドはIAサーバのハイエンドと同程度、ということになるわけだ。
(渡邉 利和(toshi-w@tt.rim.or.jp))
Vシリーズの意味
Sun Fire V880は、製品の性格としてはワークグループサーバとして好評だったSun Enterprise 450の上位後継機種となる。一方、その上位に展開するSun Fireシリーズは3800、4800、4810、6800、15Kというラインナップだ。そして、名称が他のシリーズとは異なり、“V”という文字がつけられていることからも分かるように、V880は上位のサーバとは異なるシリーズと位置づけられる。
Sun Fire 15Kがリリースされたときに、この機種のメリットとして「下位のSun FireシリーズのCPUボードを流用できる」という点が紹介されていた。PCを基準に考えると想像しにくいが、Sunのサーバは、PCで言うところのマザーボードを次々と追加して拡張する構造になっている。CPUボードと呼ばれるが、ここにはCPUやメモリが乗っているので、PCで言うところのマザーボードのイメージである。Sun Fireの3800から15Kまでの機種の違いは、単純化してしまえば「最大何枚のCPUボードをセットできるか」という点になる。つまり、機種ごとの筐体の違いは、CPUボードを挿すためのスロットがいくつあるか、という問題だと言えるわけだ。1枚のCPUボードには最大4個のCPUがセットされるので、3800は2枚、4800/4810は3枚、6800は6枚、そして15Kでは最大で18+9の計27枚のCPUボードをセットできる、ということになる。そして、このCPUボードが共通化されており、流用可能だということは、上位機種への移行の際には有利に働く。
しかし、V880では最大2個のCPUが乗るCPUボードを最大4枚セットして8CPU構成まで拡張できるようになっている。上位のSun Fireシリーズ用のCPUボードとは仕様も大きさも異なるCPUボードを採用したわけで、この点ではV880とその他のSun Fireサーバとの間にはギャップがあることになる。これが、わざわざ「エントリーレベルの最上位機種」という表現をする理由だろう。憶測になるが、多分この先V880と同じCPUボードを採用し、その枚数が3/2/1枚の機種が順次追加され、Vシリーズとしてラインナップされるのではないかと思われる。
もちろん、CPUボードの物理的な大きさや仕様が異なっていても、アーキテクチャは共通で、ソフトウェア的には完全な互換性を保っている。そのため、Vシリーズとその他のSun Fireサーバの間での移行に際して障害があるというわけではない。単に、過去のハードウェア資産を流用できるかできないか、というコスト面に限定された話である。
CPUボードの仕様が異なる理由を想像してみると、基本的にはコストダウンを狙ったものだと考えられる。上位の機種で使われている4CPU搭載可能なボードでは大きすぎて筐体自体も大型化することになるし、CPU数があまり多くなくてもよい場合に柔軟に対応できなくなる、というところではないだろうか。
(渡邉 利和(toshi-w@tt.rim.or.jp))
IAサーバとの競争
V880の発表の席で、「小型サーバ分野においてPCサーバを凌駕するSunのエントリーレベル・サーバ」と表現された。しかも、「凌駕」という言葉は「駆逐」と言い換えてもよい、という説明付きである。
この発言の根拠として挙げられたうち、興味深かったのは“不況の影響”である。ちょっと前なら、小型サーバは各部門がそれぞれ独自に選定して運用していたが、現在の経済状況ではあまり野放図な予算執行もできないため、サーバの導入はIT部門が直接管理するようになってきているという。すると、専門家であるIT部門は信頼性や拡張性、管理コストなどを重視した選択を行なうため、Sunのサーバが選択されるというのだ。
もちろん、V880に関しては拡張性やコストパフォーマンスの面でのメリットもさまざま紹介されたのだが、ここではそうした点については省略し、発表会の席上で示された図の1つについて考えてみたい(図1)。
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図1 |
図では、小型サーバと中・大型サーバの比較ということになっているが、実際にはIAサーバとSPARCサーバの比較と見てよい。一般に利用されているIAサーバでは、最大4CPU程度までの拡張性を備えたものが一般的で、それ以上の規模の拡張をサポートする機種はごくわずかとなる。しかも、IAサーバで一般的に利用されているWindowsやLinuxでは、SMP構成でCPUを増やしていった場合、4CPU程度までならCPU数に比例する形で性能が向上するが、それ以上の数になると効率が低下し、CPU数ほどには性能が向上しない、という問題があると言われる。それが、図にもある「スケーラビリティ性能の低下」ということである。そこで、“小さく始めて大きく育てる”という方針でサーバを選択する場合、最初にIAサーバを選んでしまうと4CPUのところでいったん頭打ちになり、それ以上の拡張のためにはアーキテクチャを変更せざるを得なくなる、というのがSunの主張だ。たとえば、IAサーバ+Windowsという環境であれば、ハードウェアもソフトウェアもすべて変更になるため、システムを新たに作り直し、過去の資産を放棄する、という決断を迫られる。
Sunの主張としては、だからスケーラビリティに富むSunのサーバを最初から使いましょう、ということになるのだが、これは逆の見方もできる。IAサーバ+Windowsという環境で始めたユーザーにとっては、SPARCサーバへの移行には障害があり、簡単に移行はできない、ということでもある。ここで問題になるのは、特に図の左端に近いあたりで見られる「コスト」の差である。先に紹介したとおり、V880の価格は、IAサーバのトップエンド機に近い設定になっている。比較として紹介したCompaqの機種は最大8CPU構成が可能なモデルであり、「小さく始める」ユーザーが最初に選択する機種とは言いがたいので、実際に一般的に小型サーバとして利用されるのはもっと小規模でもっと低価格な機種である。そして、こうした機種で始めるユーザーにとっては、最初の投資額が小さいことは大きな魅力であり、将来の拡張性は無視しないにしても、最初からそう大きな投資を行なうわけではないだろう。そのため、Sunとしては、最初に「小さく始める」際に選択しやすいように、もっと小規模でもっと低価格のモデルを用意しなくてはならないはずだ。将来の拡張性だけではなく、スタート時点でもIAサーバと直接比較されるようにならないと、ユーザーに対するアピールとして弱いと言わざるを得ないだろう。
現在、最低ラインのIAサーバはシングルCPUで10万以下、というところまで価格低下が進んでいる。さすがにこのレベルは難しいにしても、ある程度の信頼性と拡張性を備えたIAサーバは100万以下という価格帯が主となっている。Vシリーズに今後どのようなモデルが追加されるかは今後明らかになっていくはずだが、V880が“ハイエンド”である以上、より小型でより低価格のモデルが追加されることは間違いない。今の関心は、その価格がどこまで低く設定されるか、である。IAサーバと正面から競合する「ローエンド」サーバの投入に期待したいところである。
(渡邉 利和(toshi-w@tt.rim.or.jp))
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