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JXTA担当者インタビュー(後編) 「JXTAに関する疑問と回答」


渡邉 利和(toshi-w@tt.rim.or.jp) [著]
2001年9月8日

8月上旬に、米国からMatt Reid氏とLi Gong博士が来日した際のインタビュー後編。Matt Reid氏には主にビジネス面から、Li Gong博士には技術面からJXTAについて説明いただいたのだが、本稿ではお二人の発言を特に区別はしないのでご了承いただきたい。後編では、JXTAとJiniの関係や、携帯電話市場におけるJXTAの展開などの話題を収録。

Matt Reid
Matt Reid  Business Development Group Manager, Project Juxtapose, Sun Microsystems
Li Gong
Li Gong, Ph.D.Director of Engineering, Peer-to-Peer Networking, Sun Microsystems  博士は、jxta.orgで公開されているドキュメント“Project JXTA: A Technology Overview”の執筆者でもある

JXTAに関するSunの収益モデル

オープンソースのビジネスモデルとしては「サービスやサポートの提供」が有力だが、Sunはこうしたモデルを指向しているわけではない。Sunは、JXTAに関して直接的に利益を得ることは考えていない。

JXTAプロジェクトを開始した理由はいくつかあるが、まず挙げられるのは、P2Pがネットワークコンピューティングの新しいモデルであり、Sunとしてこれを理解しておく必要があること。そして、この分野でも主導的な地位を占めたいと考えたことだ。もちろん、P2Pというモデルは今後重要な存在となると確信しており、この機能がSunの製品群の中でも重要な要素となると予想した、という理由もある。

プロトコルとしてのJXTA

JXTAの機能を実現するには、アプリケーションに対してAPIという形で機能を提供するミドルウェアを作成する、という方法と、汎用性の高いプロトコルを定義する方法の2通りが考えられた。実際にはプロトコルとして実装したわけだが、その理由は、どのような環境でもJXTAを利用できるようにしたかったためだ。APIとして実装すると、このミドルウェアをさまざまな環境に移植する必要があるが、これはサポートが困難になる上に、技術革新や改良もやりにくくなってしまう。また、開発者の意見を聞くと、P2Pアプリケーションの開発にCを使いたい人もいれば、Javaを使いたいという人もいる。こうした要望を満たすためには、言語に依存するAPIではなく、汎用的なプロトコルとメッセージフォーマットを定義する方がよい。

P2Pプロトコルの標準化とJXTA

JXTAのRFC化に関しては、考慮すべき点がいくつかある。まず、JXTAコミュニティとIETFコミュニティには重複があり、両方に参加している人も少なくない。実際、IETFでもP2Pの標準化を目指してBOFが開設されており、標準化に向けた動きが始まっている。ただ、JXTAプロジェクトのポリシーとしては、まずシステムの実現に向けて行動を起こし、標準化については後で考えることにしている。現時点でP2Pに必要な要件を完全に把握しているわけではないし、P2Pそのものもまだ進化の途中という段階である。そのため、現状はまだ標準化に取り組む時期ではないと思う。標準化のために委員会を組織し、仕様を固めるとなると何年もかかる作業になる。しかし、標準はやはり市場の中で生まれてくるべきだと考えているので、まずはjxta.orgでの活動を通じて多くの意見を集めることから始めるのが最良のアプローチだと思う。

JXTAとWebサービス

JXTAは、Webサービスを展開する際の“乗り物”の1つになるだろう。現在考えられているWebサービスのアーキテクチャは、中央集中型のデザインで、冗長性も低いものだろう。JXTAはサービス発見のための分散型のアーキテクチャを提供する。この点で、JXTAはWebサービスに代わるような存在ではなく、Webサービスに機能を追加し、Webサービスの一部を構成する要素となると考えられる。

JXTAとJini

JiniはJava環境を前提とし、LAN環境でのリソース発見手段となることを想定している。JXTAはJavaには依存せず、WAN環境での利用を主に考えている。また、JXTAの実装のためには100KB程度のメモリがあれば充分だが、Jiniを活用するためにはJVMやRMIを必要とするため、MB単位のメモリが必要となる点も違いといえる。基本的には、JXTAとJiniはそれぞれ異なる環境での利用を想定しており、直接競合する存在ではない。

J-フォンやエヌ・ティー・ティードコモともJXTAに関して話を始めている。携帯電話にJiniを載せるのは困難な面があるが、JXTAなら問題なく利用できるはずだ。

JXTAと携帯電話

既存のJava対応携帯電話にJXTAを実装することも不可能ではないと思うが、現在開発中のjxmeではKVM+MIDPという環境に対応したJXTAを開発する予定なので、これが完成すればJava携帯電話上でJXTAを利用するのは容易だろう。Sunとしては、携帯電話上でJXTAを使ってどのようなサービスやアプリケーションを実現するのか、という点に関しては明確なアイデアはないのだが、エヌ・ティー・ティードコモやJ-フォンなど、Java対応携帯電話のサービスを開始しているパートナーが、JXTAの活用法を考えてくれると期待している。

米国の携帯電話事業者と話したところ、彼らは携帯電話をインターネットからアドレッシング可能なノードとして利用したいという強い希望を持っていることが分かった。そうなれば、現状では不可能なさまざまなアプリケーションが実現できるようになるからだ。しかし、現状ではIPアドレスの枯渇の問題があり、容易には実現できない。JXTAを使うと、1つ1つの携帯電話を“JXTAノード”として取り扱うことができ、可読性の高い個別の識別名を与えることが可能になるため、この問題に対する有力な解の1つとなり得る。

インタビューを終えて

JXTAは、プロジェクトの公開時点で既に試用可能なサンプルコードが用意されており、基本的な仕様ができあがっていたため、もう完成したものと受け取られがちである。しかし、実のところプロジェクトは開始されたばかりであり、状況は流動的である。本稿執筆時点でjxta.orgのプロジェクト一覧を確認してみたところ、“apps”“core”“other”“services”の4分野で40弱のプロジェクトが開始されていた。中には、インタビューでも触れられていたjxmeの他、jxtaperl(JXTAプロトコルのPerl5による実装)やpocketjxta(JXTAプラットフォームのPocketPCへの移植)といった興味深いプロジェクトもある。JXTAコミュニティは着々と成長しつつあるようだ。

JXTAを活用したアプリケーションに関しても、今後次々と面白いものが出現するものと期待される。筆者がインタビューで携帯電話への実装の動きの話を聞いたときには、女子高生などが渋谷あたりで「今ハチ公のそばにいる浜崎あゆみファンの人、メール下さい」なんてメッセージを配信するイメージが頭に浮かんだ。米国ではビジネスユーザー主体の携帯電話サービスも、日本では子供の身近なコミュニケーションツールとして機能している現状がある。これを踏まえると、JXTAには日本で独自の発展を遂げる可能性が秘められていると感じられてならない。もっとも、JXTAにテレクラの代替として機能することを望んでいるわけではないのだが。

渡邉利和





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