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進行しつつある静かな革命


渡邉 利和(toshi-w@tt.rim.or.jp) [著]
2000年12月23日

リスク回避とサービスモデル

 CODは、前述のとおり富山の薬売り方式である。具体的には、64CPUまでの構成が可能なハイエンド機Starfireに適用される。基本パッケージでは、20CPU構成のStarfireを8CPUの利用権付きで購入できる。ちなみに、価格は6000万円ほどである。

 さすがにSun Microsystemsの最上位サーバであり、価格は並のPCサーバなどと同列には比べられない。現実問題として、新たにドットコムビジネスを開始しようとする企業にとっては相当な投資に当たるはずで、誰でも簡単に利用できるというものでもない。ただし、これにはいろいろと理由があるようだ。

 CODでは、「ハードウェアの使用権」という概念が導入されている。つまり、上記の基本パッケージを購入した顧客は、CPUを20個所有しているが、このうち12個については使用する権利がない。サーバの処理能力が不足した場合にはこの追加のCPUを使用できるのだが、その際には追加でライセンス料を支払う必要がある。富山の薬売りとはこのことで、使ったらその分を支払う、というモデルなのである。

 この方式は、将来拡張の可能性が高いと見積もってはいるものの、開始時点での初期投資額を抑えておきたいユーザーにとってはメリットがある。なにしろ、すでに手元にCPUがあり、実際に筐体内にセットされているのだから、必要になったら即座に稼働させることができる。従来のモデルに従って8CPU構成のStarfireを購入し、不足が明らかになった時点で追加CPUを発注し、納品されたらそれをセットアップする、という段取りに比べて大幅に時間を節約できるだろう。Webサイトの場合、この対応時間の差が評価に致命的な影響を与える可能性も考慮に入れれば、危機管理手法としても優位は明らかだろう。

 しかし、米国では1999年11月から導入され、実績を上げているCODが1年経ってようやく日本でも実施されるようになったのは、なにもサン・マイクロシステムズの対応が遅かったというわけではない。日米の税制の違いなど、さまざまな問題を解決する必要があったためだという。実のところ筆者は企業税制について詳しいわけではなく、聞きかじりになってしまうのだが、要は資産の計上方法や減価償却などに影響を与えるということのようだ。つまり、手元にあるが利用できないハードウェア、というものの存在は税制上想定されていない、ということだ。

 CODの導入にあたっては、システムに備わっているが利用されていないCPUが明確に分かり、いつから使用開始されたかがきちんと確認できる必要があったという。単純なソフトウェアによるロギングなどではなく、ハードウェアレベルで機能が備わっているとなると、ドメイン分割機能や動的再構成の機能を備えたStarfireしかない、というのが今回CODがまずStarfireから導入された理由だ。通常のマルチプロセッサシステムでは、ユーザーが明示的にCPUをいくつ使うか指定することはない。システムに存在するCPUは全部使うのが普通である。しかし、StarfireではCPUをグループ分けし、それぞれを別個のシステムとして運用することができる。この機能を使って20CPUを8CPUと20CPUの2つのドメインに分割し、20CPUのほうのシステムは使わない、という設定にして出荷する。後に必要になった場合には、20CPUのドメインから必要な数のCPUを切り離し、8CPUのドメインに追加してやればよい。システム稼働中にこうしたダイナミックな変更ができる機能を備えているのは、現在のSunのラインナップの中では唯一Starfireのみである。

 税制に加えて、確実なライセンス管理も問題となるはずだ。誰が買ってどう使っているか把握するのが不可能なPCのようなシステムに同様のプログラムを導入しても、有名無実となるのは明らかだろう。使用していないCPUをシステムから取り出して別のマシンにセットして使ってしまうとか、酷い場合には転売してしまうとかいった可能性まで考慮すれば、信頼できる顧客に販売するシステムでないとメーカー側のリスクが大きすぎることにもなる。そう考えると、まずStarfireからというのは実にもっともである。

 実施上の困難はとりあえず置いておくとして、CODが目指す未来は最近IT企業が盛んにメッセージしている“サービスモデル”そのものだろう。ASP(Application Service Provider)に見られるように、機能をサービスとして提供して利用料金を徴収する、というモデルだ。Sunではよく、「水や電気のように、必要なときに必要なだけ利用し、利用した分だけ料金を払う」という表現をしている。コンピュータが提供する演算性能を水や電力と同じ感覚で利用するのは、現時点では不可能だ。少なくとも日本では、ネットワークのコストや信頼性を考えると、必要なときにいつでも必要なだけ使えるとは到底思えず、いざというときに使えないと困るからやはり自社でサーバをもってないと、と考えるのが普通だろう。しかし、未来永劫この状態のままとも思えない。多くの企業にとって、サーバを所有し、維持管理することは本業でもなんでもない。従って、利用料金を払って専門家が提供するサービスを利用し、自社では本業に専念する、というモデルのほうが効率はよいはずだ。

 ITという言葉は完全に一般化したようだが、実のところITがこれほど注目されるということは、まだまだ本格的な活用が始まったとは言えない状況であることの裏返しだろう。ITもビジネスの道具である以上、単に本業のためにITを利用するだけというユーザーがもっと増えていいはずだし、みんながITの専門家を目指しても仕方がないだろう。必要なユーザーがさほど意識することなく自然にITを利用するように早くなってほしいと思うが、CODはそうした状況の実現に向けたSunからのメッセージであろう。まだ先のことと思うか、そろそろかと思うか。受け止め方はユーザー次第だが。

渡邉利和


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