BUSINESS CENTER / 導入事例 Case Study 1999年10月号
日本赤十字社
文書の共有を紙からデータへ移行 サイボウズOfficeのイントラネットシステム
1999年11月15日
Introduction
日本赤十字社中央血液センターでは、Webグループウェアの掲示板を利用し、社内文書をWebブラウザから利用できるようにしている。データ化することで、今まで人手をかけて管理/配布していた膨大な社内文書を効率的に共有できるようになった。システム構築から運用への道のりを追う
- Webグループウェアの掲示板の機能を利用した低価格な文書共有システム
- 自前で既存の社内LANを拡張し、ネットワークを統合
- 紙の文書を複合機でデータ化し、ファイルフォーマットも統一
日本赤十字社
1886年、ジュネーブ条約への加盟により、翌年救護団体「博愛社」から日本赤十字社に改称。同年、赤十字国際委員会の承認により国際赤十字に参加。現在では、災害救援活動、ボランティア、医療事業、看護婦養成、社会福祉事業など幅広く活動を行っている。事業資金は個人社員、法人社員から拠出された社費および寄付金によって調達されており、現在全国民の7人に1人が赤十字社員に加盟している。血液事業を扱う中央血液センターは、社長直轄の血液センターとして地域的、季節変動等の影響による血液製剤の供給に支障を来さないため全国規模での需給調整等を行なう傍ら、一血液センターとして血液製造、供給も行なっている。また関連事業として、骨髄移植財団のHLA適合対象者検索協力も行なっている。
|
(アスキーNT/イビサ)
社内の情報共有にWebグループウェアを活用
日本赤十字社中央血液センター(以下中央血液センター)では、社内公開文書を紙からデータに移行し、各部署のPCからWebブラウザを使って利用できるようにしている。文書をWebで共有するための仕組みとして利用しているのは、Webグループウェア「サイボウズOffice」の掲示板だ。ファイル形式は、富士ゼロックスのDocuWorksのフォーマット(後述)で統一されており、添付ファイルとしてサイボウズOfficeの掲示板にポストされている。ユーザーは各部署のPCからWebブラウザを使って、それらの文書の検索や参照が行なえる。
 |
画面1 サイボウズOfficeでは、スケジュール、掲示板、施設予約などが現在使用されている。トップページには社屋の写真や社名などが加えられている |
また、サイボウズOfficeのスケジューラや施設予約も導入されている。共有スケジュールには、行事やトップの予定等が掲載されており、一方施設予約は会議室の予約システムとして機能している。
 |
画面2 サイボウズOfficeでは掲示板のグループ化やアクセス制御も可能だ。基本的にはすべて公開情報なので、情報系ネットワーク内のどこからでも利用できる |
本格運用はまだ開始されたばかりだが、各部署での利用度はすでに高い。実際に見せてもらったが、スケジューラや施設予約も数多くの書き込みが行なわれており、情報共有システムとして有効に活用されているようだ。
(アスキーNT/イビサ)
各部署と要件を検討しシステム構築を自前で行なう
中央血液センターの社内文書の配布は今まで紙が中心で、総務課が文書の管理や配布を行なっていた。一口に社内文書といっても、事務通達や業務書類など一般企業でも扱われる文書のほかに、医療関係の技術情報や記事、論文、学会発表など、扱う内容は多岐に渡っている。この中には、たとえば血液の取り扱いや肝炎の情報など業務にとって重要なものも含まれている。
こうした文書を総務課が一括管理し、適切な部署に配布していくという作業は大きな負担となっていた。また、再利用性や検索性の欠如といった紙としての限界にもやはり突き当たった。そのため、こうした文書共有システムを含むイントラネットの導入の検討を開始した。
実際、昨年(1998年)の9月くらいから具体的な計画がもちあがり、データセンターの管理課、総務課などを中心に8人程度のプロジェクトが組まれた。「まず、やったのは社内のネットワークがどこまで到達しているかを確認すること。そして、部署で何台のクライアントマシンが必要か、あるいはケーブルやネットワーク機器をどれだけそろえればいいか、というネットワーク全体の把握でした。現在と比べれば、当時でも社内LANのインフラは7割くらいは完成していましたので、このネットワークを拡張する形でスタートすることにしました。」(日本赤十字社中央血液センター 村氏)ということで、実際に足で各部署をまわり情報収集を行なった。システム要件は、各部署との協議によって決定され、ケーブリングやマシンの設置等の実作業もプロジェクトや各課が人材を出しあって行なわれた。計画から構築まで、外部のメーカーや業者等の手は一切借りず、また社内の情報システム部門が一方的に計画・構築したわけでもないという。
各部署との要件や運用方法等の協議は、構築当初から随時行なわれた。もともと社内LAN環境では、Windows PCやPC UNIXが利用されている一方、検査/製剤/研究など技術系の部門では古くからMacintoshが利用されていた。こうしたさまざまなクライアントから、システムが利用できるようにする必要があったわけだ。この要件から、Webブラウザから利用でき、安価なWebグループウェアの導入に白羽の矢が立った。
Webグループウェアの選択は、「最近はフリーウェアのWeb掲示板なども多いのでこれらも検討したが、ユーザーインターフェイスがこなれたものがなかった。サイボウズOffice選択の理由は、やはり一番先に目にはいったというのが大きいが、ユーザーインターフェイスが洗練されている点やCGIでどのプラットフォームでも同じように動作する点、そして商用できちんとサポートが受けられるという点も選択の理由だった」(村氏)という。サーバ環境がBSD OS+Apacheということで、BSD OSでの動作が可能な点も、選択の理由になったそうだ(ただしサイボウズでの動作確認は行なわれていない)。
最終的にはWindows PC、Macintoshあわせて合計50台程度のPCの新規購入が決定し、計80台程度規模のネットワークになった。「米国でちょうど1000ドルPCがもてはやされた時期で、日本もデスクトップPCがかなり価格的に魅力的になってきた時期でした」(村氏)ということで、価格重視でWebブラウザが快適に利用できる程度のスペックのPCを一括購入した。Windows PCは従来からもWindows 95マシンが利用されていたが、各部署への拡充を求める声が高かったという。また、Macintoshを利用する技術系の部門にも、iMacを数台導入したとのことだ。
(アスキーNT/イビサ)
不必要なスペックや機材を排し低価格にこだわったシステム
機材の導入とともに昨年(1998年)末から徐々にネットワーク機器やクライアントマシンの設置を行なっていった。クライアントは管理の手間を考えて、ハードウェア構成、アプリケーション等のインストールパス、各設定等も共通にした。今年の2月からは、一部で試験運用を開始。運用などについて、さらに詰めた論議を行ない、5月から本格運用に入っている。
現在運用中のイントラネットの概念図は、図1のとおりだ。メインフレームによる基幹系システムとは別に、情報系ネットワークとして日赤中央血液センター内で構築されている。主業務、支援業務の独立した3つのEthernetのネットワークを統合することで、全体が構成された。各ノード間に設置されたゲートウェイは、IPルータとして機能するほか、ネットワーク間のパケットフィルタリングを行なう内部ファイアウォールとしての機能も備えている。これは無駄なパケットを他のネットワークに流すのを避ける一方、3つの独立したネットワークで今まで利用されてきた業務用のサーバや機器へのアクセスを制限するという役割もある。なお、インターネットへは、ディジタルアクセス128によって接続されている。
 |
図1 中央血液センターのイントラネット概念図。骨髄センター(100BASE-TX)をのぞいて、10BASE-TのEthernet環境になっている |
サイボウズOfficeが稼働するイントラネットサーバ、インターネット系のサービスやファイアウォール、そしてゲートウェイなどのサーバは、全てBSD系のPC UNIXで構成されており、ファイルサーバのみWindows NTが採用されている。
 |

写真1 サーバルームに設置されているサイボウズOfficeが稼働するコンパックのPCサーバ |
また、渋谷と新宿に設置されている5箇所の献血ルームともISDN経由でWAN接続されている。各献血ルームに設置されたノートPCからイントラネットで共有された情報にアクセスすることができる。WAN接続にはリモートアクセスサーバではなく、高機能と低価格を実現しているコンシューマ向けISDNダイヤルアップルータを利用した。
 |

写真2 ヤマハのダイヤルアップルータで都内5カ所の献血センターとWAN接続されている |
システム構築コストに関しては、やはり自前で構築した点、PC UNIXの導入、低価格なPC本体とアプリケーション、店頭売りのダイヤルアップルータなどを採用した点が大きい。インテグレータに委託した一般的なシステム構築に比べ、かなり低価格に押さえられているのは間違いないだろう。技術的にUNIXに精通していた点も早期導入の鍵になっているようだ。
(アスキーNT/イビサ)
紙の文書をDocuWorksでデータ化
一方で、本システムには紙の文書をデータ化するという、重要な要件がある。基幹センターということで都道府県の各支部からの文書も日赤中央血液センターに集まってくるのだが、現在も多くは郵便やFAX等紙がベースになっている。また、新聞や雑誌などの切り抜き等をニュースや参考資料として利用することも多い。このため、中央血液センター内で情報共有するためには、紙からデータ化する仕組みが必要だった。
中央血液センターでは、富士ゼロックスのネットワーク対応デジタル複合機「DocuCentre 250」2台、および電子文書ソフト「DocuWorks」を利用して、紙媒体のデータ化とともにファイルフォーマットの統一(DocuWorks文書:XDWフォーマット)を図っている。電子文書といえばやはりPDFが有名だが、この事例ではPDFのように見栄えの良さや各プラットフォームでの互換性より、手間をかけずにデータ化すること、あるいは複合機のスキャナ機能との親和性から、手軽なDocuWorksを採用した。DocuCentreではスキャンされたデータは、接続されたWindows PCに送られDocuWorksファイルとしてサイボウズOfficeの掲示板に公開される。ユーザー側のWebブラウザには、無償配布されているDocuWorksのビューアを用い、閲覧することができる。ただ、ビューアに関してはまだMac版が公開されていないため、公開され次第利用したいと考えているとのことだ。
 |

写真3 部署ごとに設置されたPCからWebブラウザを使って、社内文書を閲覧する。導入されたクライアントPCは、CPUにK6-2/333MHz、メモリ64MB、HDD4GBを搭載した標準的なWindows 98マシン |
 |

写真4 社内2カ所に設置された富士ゼロックスのデジタル複合機「DocuCentre 250」。取り込まれた文書は、接続されたWindows PCからアップロードされる |
(アスキーNT/イビサ)
まとめ
田口氏によると、サイボウズOfficeの機能のうち、まだ利用していないプロジェクト管理の導入も近々行ないたいということだ。また、E-Mailインフラがまだまだ一部のみということで、管理の容易なWebメールなどの導入も検討していきたいとしている。
本誌で何度も言及しているが、イントラネットが企業内で普及した理由は、やはり導入コストが安価で、構築が容易という特徴に尽きる。今回紹介した事例は、こうしたイントラネットの恩恵をフルに享受した構築事例といえるだろう。
(アスキーNT/イビサ)
|