BUSINESS CENTER / 導入事例 Case Study 1999年11月号
クボタシステム開発
オープンな技術でEDIを構築。生産リードタイムを大幅短縮へ
1999年9月29日
Introduction
クボタシステム開発は、オープンな技術を積極採用した電子商取引(EDI)システムでアプリケーションプロバイダに挑戦する - アプリケーションサービスプロバイダを展開
- オープンな技術を採用し、低コストで信頼性の高いシステムを構築
- Webクライアントでカスタムアプリケーション並の帳票印刷を実現
クボタシステム開発株式会社
- 設立:1987年7月1日
- 本社:大阪市浪速区敷津東1-2-47
- 代表:吉田昌弘
- 資本金:3億円(株式会社クボタ全額出資)
- 従業員数:500名(1999年6月現在)
- URL:http://www.ksi.co.jp/
株式会社クボタの情報システム部門が独立、クボタの全額出資で設立されたシステムインテグレータ。クボタの多岐にわたる事業分野で培った技術力をベースに、受託開発やパッケージ開発にとどまらず、さまざまな新しいソリューションを展開している。その内容は企業セキュリティソリューションやPCマネジメントサービス、バーチャルドメインサービス、ファしリティマネジメントと非常に幅広い。品質管理面ではISO9001の認証を取得。マイクロソフトソリューションプロバイダーでもあり、将来への明確なビジョンと技術力で定評を得ている。 |
(アスキーNT/宮下)
ASP
米国で注目を集めているASP(アプリケーションサービスプロバイダ)が国内でも動きはじめている。ASPとは業務パッケージの使用量に応じて課金する、新しいかたちのアウトソーシング・サービスである。 今回紹介するクボタシステム開発の事例もその1つだ。同社がASPとして提供するのは共同利用データセンターに構築する「Secure Web EDI System」。このシステムを適用した最初の事例が、クボタの機械事業本部向けに開発した企業間電子商取引(EDI)システム「K-planet」である。 このシステムは今年4月にカットオーバーしたばかりだが、クボタ向けのサービスで抱えるユーザー数だけで、国内のASPではベスト5になる規模を誇っている。「Secure Web EDI System」はすでに電機、石油、住宅といった業界を中心とする15社から強い引き合いがあり、今後具体的な案件が進められていく予定だという。
(アスキーNT/宮下)
全国440の協力工場とのEDIで生産リードタイムを短縮
クボタの機械事業本部ではトラクタ、コンバインなどの農業機械を生産している。生産拠点は全国に拡がっており、関東は宇都宮、筑波、竜ケ崎、関西は枚方、堺、臨海といった全国7ヶ所8拠点に生産工場をもっている。これらの工場は北海道、沖縄を除く全国440ヶ所の協力工場から部品を仕入れ、生産を行なう体制をとっている。「K-planet」はクボタが協力会社から部品を調達するためのシステムで、協力工場へ部品発注してから納入、生産、完成にいたるまでの生産リードタイムを短縮するのが目的だ。もともとクボタは部品調達のビジネスプロセスをVANと郵便で行なっていたが、このシステムの導入で部品発注から部品納入、組み立てまでに約15日間かかっていた生産リードタイムを6日間も短縮した。それだけでなく、在庫部品の削減にも成功している。 システムの中枢となるサーバ群はクボタシステム開発本社内の共同利用データセンターに設置されている。データセンターは記録テープを地下金庫で保存し、社員でも室外から操作を行なうといった厳密な管理のもとで運営されている。 クボタから協力工場への部品発注の情報はデータセンターのサーバに蓄積される。協力工場はデータセンターにダイヤルアップ接続してWebブラウザでアクセス、取得した発注情報をもとにクボタに部品を納入するしくみだ。すなわちクボタとその協力工場は、ASPであるクボタシステム開発のデータセンターが提供するソリューションサービスを受け、EDIを実現しているというわけだ。 協力工場が利用するダイヤルアップ網は日本テレコムの協力を得て、日本全国のどこからアクセスしても1分10円という課金体系を実現している。
(アスキーNT/宮下)
オープンな技術を積極採用。Linux DBの性能を高く評価
「K-planet」の中枢は見事に分散された3階層構造になっている(図1)。全国ダイヤルアップ網で接続される協力工場のクライアントがプレゼンテーション層。それと結ばれるデータセンター側のアプリケーションサーバがアプリケーション層。Oracleで構成される2台のデータベースサーバがストレージ層にあたる。 注目されるのは、サブデータベースサーバにLinux版のOracle8 Workgroup Serverを採用している点だ。導入時にWindows NTとLinuxのどちらを採用するかを検討するために、実際のシステムに近いデータベースを構築しパフォーマンスの測定を行なった。今回のシステムで想定されるSQL文を投げるという比較を行なったところ、LinuxがNTの約4倍のパフォーマンスを記録、Linuxの採用に踏み切った。 メインデータベースサーバには、月間約44万件におよぶトランザクションに対応するためパーティショニング機能をサポートするOracle8 Enterprise Editionを採用する必要があった。「現段階ではLinux向けにEnterprise Editionが出荷されていないためHP_UXを採用した。将来的にはデータベースはすべてLinuxにしたい」(クボタシステム開発 ビジネスシステムセンター ソリューションテクノロジーグループ 日原偉氏)。 顧客のLinuxに対する不安はなく、むしろ歓迎されているという。Linuxへの一般的な信頼はもとより、4月にカットオーバーして以来半年近くを経過し、いまだシステムダウンしていない実績も評価されてのことだ。「Linuxは自動バックアップなどの運用面でツールが不足している。RAID製品はそろってきたものの、他の周辺機器のドライバを自分で書く必要がある。だがそこさえ解決すれば、既存のOSにとってかえられる」と、日原氏は現在のLinuxの状況を冷静に見つつ、Linuxの将来には非常に明るい展望をもっている。 DNSサーバや拠点サーバにもLinuxやFreeBSDといったPC-UNIXを積極的に採用している。アプリケーションもApacheなどのオープンソースを利用している。「オープンソースは世界中で開発が進められており、クオリティが高いだけでなくバグフィックスも早い。また、自分たちでソースコードを見ることができるメリットは大きいし、低コストなのも魅力」(日原氏)。 主要なハードウェア、ソフトウェア構成
使用ハードウェア - アプリケーションサーバ Sun Enterprise 5500(CPU:Ultra SPARC、メモリ:1.2GB、HDD:8GB)
- データベースサーバ(メインDBサーバ) HP K220(CPU:PA7100×2、メモリ:1GB、HDD:90GB)
- データベースサーバ(サブDBサーバ) 自作PC(CPU:Pentium II-450MHz、メモリ:256MB、HDD:13GB)
使用ソフトウェアアプリケーションサーバ データベースサーバ(メインDBサーバ) - HP-UX 11.0
- Oracle8 Enterprise Edition 8.0.5
データベースサーバ(サブDBサーバ) - redhat Linux 5.2J
- Oracle8 Workgroup Server 8.0.5
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図1 「K-planet」の構成図。クボタの生産拠点の発注情報はデータセンターのデータベースサーバに蓄積される。協力工場はWebブラウザからデータセンターにアクセスし、発注情報を取得する |
(アスキーNT/宮下)
さまざまな課題をアイデアで克服
クボタの生産拠点における生産管理システムをつくり変えたくはなかった。そこで解決策として浮かび上がったのが、新たに拠点ごとに設けた拠点サーバに、既存のシステムから決められたフォーマットでデータ(テキストファイル)を投げる方法である。拠点サーバは1分おきに自身のディレクトリ上にファイルが置かれているかを確認し、ファイルが置かれていた場合はftpでデータセンターのアプリケーションサーバに送信するというわけだ。 アプリケーションサーバは、随時拠点サーバから送信されてくるデータを監視している。受信したデータの内訳は発注データや納入指示のデータが主だ。更新系のデータはOracle8 Enterprise Serverへ、参照系のデータはOracle8 Workgroup Serverへ蓄積される。ところで、アプリケーションサーバは2台のデータベースサーバを意識する必要がなく、常にOracle8 Enterprise Editionに対してだけアクセスする。これはOracleがもつデータリンク機能を使うことで、1台のデータベースを相手にアプリケーションサーバのロジックを構成しているというわけだ。 協力工場側でWebブラウザのGUIはJavaアプレットで実現している。Javaアプレットの開発にはツールを使用せず、JDK(バージョンは1.1.6)のみで開発した。しかもクラスにはAWTしか使っていない。そのため、サポート対象のOSはWindows 95/98/NT4.0とうたっているものの、あらゆるプラットフォームで動作する。実際、Linuxクライアントでも完全動作を確認している。また、このようなエクストラネットの場合、外部からの不正アクセスを防ぐセキュリティ対策が重要になってくる。今回のシステムではデータセンター内にプライベートCA(認証局)を設け、デジタル証明書を発行している。Webクライアントはこのデジタル証明書がないとJavaアプレットを実行することができない。この仕組みが「Secure Web EDI System」と名付けられている所以だ。  |
「Secure Web EDI System」の標準的な構成。クボタの事例の場合、クボタ側はWANによる接続だが、この構成ではすべての企業がクボタシステム開発が提供するダイヤルアップ回線を使って接続するようになっている。専用線を引き込む体力のない企業でも利用できる |
ところで、アプリケーションサーバには非常に巧妙な仕掛けが施されている。クライアントの画面、帳票はそれぞれ10数種類ある。クライアントからのさまざまな要求単位でプロセスを用意するのではなく、常に稼動しているプロセスは親プロセス1つだけである。親プロセスは常にクライアントからのリクエスト待ち状態にあり、リクエストを受け取るとリクエストの処理IDを判別、その動作ロジックのもととなる各種設定をOracleデータベースから読み出し、子プロセスを起動してその各種設定を渡す。クライアントからの要求によるセッション単位で子プロセスを起動し、処理が終了すれば子プロセスを解放する。この仕組みによって機能追加や改造などが発生した場合、新たにプログラムを書く費用が発生せず、データベースのテーブルに論理を登録するだけで済む。開発期間の短縮、コスト削減、生産性の向上を実現するというわけだ。
(アスキーNT/宮下)
Webブラウザで精巧な印刷を実現するコンテンツ・オン・デマンド
クボタのすべての拠点では今回のシステムが稼動する以前から物品受入システムが稼動している。これは納品物にバーコードの付いた納入カードを添えることにより納入部品の種類と個数を把握し、大量の納品物の処理を実現するものだ。従来まで納品カードはクボタの生産拠点が郵便小包や宅急便で協力工場に送っていたが、時間とコスト増の要因となっていた。また、協力工場側では100の発注に対して50しか出荷できない場合がある。実は納入カードはA4の用紙に2枚印刷されるので、このような状況時には、必要なカードだけを切り離し選択する作業が必要だった(これをクボタではカルタ取りと読んでいる)。この余計な作業時間と紙資源のムダの発生を避ける解決策として、今回のシステムでは協力工場側で納品カードを必要な分だけリアルタイムに印刷する手法を採用した。ただ、ここで大きな障壁となったのは、クボタの受入検査システムのバーコードリーダが1mmのズレも許さない高品質な印刷を要求していたことだ。Webブラウザは印刷に弱い環境である。この問題を解決したのが「コンテンツ・オンデマンド・プリント」だ。  |
納入カードのサンプル。EIAJ標準の様式になっている。A4の用紙に2枚印刷される。クボタで実際に使用されているカードは項目がこれの2倍ある |
これはデータセンターの帳票サーバでPDFファイルを生成、Webクライアントからダウンロードし、それを印刷するというものだ。これによって納品カード作成のビジネスプロセスが変更でき、短期間で納品カードとともに納品物を納入できるようになった。メリットはもう1つある。PDFファイルを印刷するので、プリンタの機種を選ばず、どこでもクオリティの高い同一の帳票が作成できる。「コンテンツ・オンデマンド・プリントへのユーザーの関心は高く、このシステムだけをやりたいという声も多い」(日原氏)。 帳票サーバでは納入カード以外にもさまざまな帳票を生成している。その枚数は月間44万枚、1日あたり2万枚にもおよぶ。なお、帳票サーバのみプラットフォームにWindows NTを採用しているが、将来はUNIXに置き換える予定だ。
(アスキーNT/宮下)
まとめ
「Secure Web EDI System」はプロプライエタリな技術を徹底的に排除したシステムだ。敢えてその部分があるとすればOracleデータベースくらいであろう。まだ前例の少ないオープンな技術を使ったシステム構築である、妥協したい場面もあったはずだ。このプロジェクトが成功した背景には、システムのコンセプトを自ら決定し、最後までプロジェクトの中心に立った日原氏の存在が大きい。プロジェクトリーダーのリーダーシップがプロジェクトの成功にとって重要であることを立証した事例ともいえるだろう。  |
クボタシステム開発株式会社 ビジネスシステムセンター ソリューションテクノロジーグループ 課長代理 日原 偉氏 |
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「Secure Web EDI System」の技術系スタッフ。左からコールセンターを担当する長谷川順子氏、ネットワークを担当した高寺軌昌氏、クライアントのJavaアプレットを担当した長田力作氏 |
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今回のシステムの営業を担当した福島靖博課長(左)、プロジェクトマネージャの南出武課長 |
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(アスキーNT/宮下)
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